新宿『食堂わた』、オープン半年で坪月商40万円。三つ星の技術で夜は和食居酒屋、昼は定食店に
敷居を低くして入りやすい雰囲気に
物件探しは、新宿でありながら、落ち着いたエリアの新宿御苑前に理想的な路面店を見つけた。入口を全面ガラス張りにして、外から中の雰囲気が伝わることにこだわった。木枠の窓からは、温かみある灯りがこぽれる。
「1名様の女性も飛び込みで入りやすい店構えにしました。客層の年齢は高く、20代はほぼいません。食通の方が多いので、『この値段でやっているのは、がんばってるね』と、僕の作る料理の価値をわかってくれる方が多いんです」
内装はデザイン会社を経営している同級生に依頼。4人がけのテーブルが2つ、カウンター9席、17人で満席になる。価格帯としては、それほど安いわけではないので、ある程度テーブルの間隔は取り、大衆酒場ではない雰囲気を持たせた。広くしすぎると殺風景になり、活気がなくなる。そのバランスには気を遣った。
「カウンターから手元が見えるようにして、料理を作る様子をお客さまが眺められるようにしました。そんな臨場感も楽しんでほしい」
居酒屋とも呼べない。定食屋とも違う。ありそうでない、新しい業態とも言える。
「『食堂』を頭につけましたが、『食堂ではない』とよく言われます。敷居を低くして、入りやすい雰囲気を出したいと名づけました。サービスや料理はしっかりしていきたい、そこは狙っているところです」
オペレーションを改善して月商もアップ
客単価は、オープン当初より徐々に上がってきており、今は6,000円から8,000円。夜2名で2万円を超えることはないぐらいだという。
「事業計画書で提出した『1年後の売上』より好調です(笑)。平均の月商は、360万円ぐらいで、4月は480万円ほど。最初はワンオペ、そのあとは、料理人と2人でまわしていましたが、アルバイトの従業員が1人増えたので、回転率が上がったことが功を奏したかと思います」
開店後、半年経ってオペレーションも少しずつ改善できるようになり、ランチは、3回転で約50人のゲストを迎える。ランチで大切にしてることは、1,000円台を超えないような値付けにすること。サラリーマンが来てくれるギリギリの値段だ。ほぼ毎日来る人もいるという。
「夜の単品メニューで、もう少しで傷んでしまいそうな食材の調理法を変えて使い、フードロスの面でも工夫しています」
夜は、品数こそ多くはないが、おひたし、白和えといった一品料理や、お造り、焼き物など本格的な日本料理をそろえる。お造りはクエに鮪、白イカなど3種で、時期により2,000円からのお値打ち価格。イカには丁寧に隠し包丁を入れ甘みを引き出すなど、修業先で学んだ技術がしっかり生かされている。厳選した日本酒や故郷・静岡の茶葉を使ったお茶割りなど、酒類にもこだわりを持つ。
もちろん、 昼のおばんざい定食にも細かい仕事が施されている。季節により、お刺身、イカのぬた和え、卵豆腐、鶏柚子胡椒天ぷらなど10種ほどが、料亭の八寸のようにかごに盛り付けられる。ご飯と味噌汁が付いて1,800円とリーズナブルな価格設定で、昼限定10食。割烹の味を居酒屋感覚で味わえるとあって行列が絶えない。
「夜の人気メニューは、だし巻きや土鍋ご飯。定番のほかに、月に1回程度新作を出しています。メニューは、それほど多くないのですが、今より多くすると、どうしてもオーダーの少ないメニューがありロスが出てしまうんです。それは、オープンしてからの半年間で学びました」
