東京都がインバウンド対応で最大300万円を支援。飲食店も使える人材確保・育成の補助金
飲食店をはじめとするさまざまな業界で人手不足が課題となる中、東京都と公益財団法人東京観光財団は、「観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金」を開始した。外国人旅行者の増加という現状を踏まえ、飲食店を含む観光関連事業者の人材確保・定着・育成を後押しする施策だ。本記事では、この補助金の概要、申請方法、そして混同しやすい「インバウンド対応力強化支援事業補助金」との違いを解説する。
>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!
人材確保・育成を支援、「旅行者受入対応力強化支援事業補助金」とは?
「観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金」は、東京都内の観光関連事業者が行う人材確保・定着・育成の取り組みを支援する制度だ。補助上限額は1事業者あたり300万円(うちコンサルティング経費は100万円まで)となっている。ただし、この上限額は令和6年度と令和7年度の2か年合計の交付額のため、令和6年度に同補助金を受給した事業者は注意が必要だ。
補助対象は、東京都内に本店または支店を置き、観光客向けに事業を営む中小企業者。飲食店の場合、「EAT東京」の「外国語メニューがある飲食店検索サイト」に掲載されている店舗の運営事業者であることが要件の一つとなっている。また、いわゆる「みなし大企業」のように、大企業が実質的に経営へ参画していないことも求められる。
補助対象となる事業と経費
補助対象となる事業は、大きく分けて「人材の確保」と「人材の定着・育成」、そしてそれらを実施するための「コンサルティング」。令和7年度は対象人材が「一般人材」「外国人材」「DX人材」の3つに区分され、外国人材とDX人材に関する事業は一般人材よりも補助率が高く設定されているのが特徴だ。具体的には、一般人材の補助率が補助対象経費の3分の2以内なのに対し、外国人材とDX人材に関する事業は4分の3以内となる。なお、DX人材とは、IPA(情報処理推進機構)が定める情報処理技術者試験のレベルに準じる人材などを指す。
ちなみに、よく似た名称の補助金として、東京都などが実施する「インバウンド対応力強化支援事業補助金」があるが、目的が異なるため注意したい。そちらは多言語対応やキャッシュレス決済の導入、トイレの多機能化といった設備投資が主な対象だ。一方、本記事で紹介している「旅行者受入対応力強化支援事業補助金」は、あくまで人材の確保と定着・育成にかかる費用を対象としている。
補助対象となる具体的な経費の例は、以下の通り。
■人材確保に関する事業
・求人広告の掲載費用、記事制作費
・求人パンフレットの作成費用
・求人・転職イベントの開催・出展費用
・転職エージェントの仲介手数料
■人材定着・育成に関する事業
・外部研修(語学、ホスピタリティ研修など)の実施費用(講師謝金、交通費など)
・技能習得(接客、調理、清掃など)を目的とした動画やマニュアルの作成費用
・社員教育(語学検定、業界研修など)の費用
・業務環境改善や福利厚生の充実、就業規則改正などに関するコンサルティング費用
申請は2026年3月31日まで。予算上限に達し次第、受付終了
申請から補助金交付までの大まかな流れは、以下の通りだ。
1. 交付申請
2. 交付決定通知の受領
3. 補助対象事業の実施
4. 事業完了後の実績報告
5. 補助金額の確定、請求、支払い
募集期間は2025年4月1日から2026年3月31日まで。郵送の場合は締切日の消印有効、電子申請システム「J-Grants」の場合は3月31日17時が締切だ。ただし、申請額が予算上限に達した時点で受付終了となるため、活用を検討する事業者は早めの準備が望ましい。
この補助金は、飲食店の人手不足解消に直接繋がる有効な支援策だ。増加する外国人旅行者は、飲食店にとって事業拡大の大きなチャンスでもある。本補助金と、設備投資を対象とする「インバウンド対応力強化支援事業補助金」を組み合わせるなど、戦略的な活用を検討してみてはいかがだろうか。
