若者が集う下北沢で“オトナ居酒屋”。『D-DRAGON』が狙う「セレカジ」ニーズとは?
「セレカジ」はコロナ禍を経て生まれた新たな価値観
そして、宮本氏が『D-DRAGON』の業態開発で意識したのが「セレカジ」というキーワードだという。セレカジは「セレブカジュアル」を略した宮本氏の造語だが、その意味を「手の届く贅沢、手軽なセレブリティ」と説明し、さらにこう続けた。
「コロナ禍を経て生まれた新たな価値観、それがセレカジです。コロナ禍以前は『コストパフォーマンスの高い店』=『安い店』という捉え方が主流でしたが、アフターコロナ期に移行して消費者は外食により目的性を求めるようになりました。客単価8,000円で地鶏の焼鳥と自然派ワインのペアリングが楽しめる店など、ファインダイニングのサービスをリーズナブルに体験できるような店を『コスパの高い店』と捉えるようになっており、そうした価値基準の源にあるのがセレカジのニーズだと考えているわけです」
「若者でも手の届く贅沢」を基準に設定した客単価6,000円
『D-DRAGON』は想定客単価を6,000円に設定しているが、これは「若者でも手の届く贅沢」(宮本氏)として導き出した数値だ。フードのメニュー構成についてもセレカジを強く意識したという。
フードメニューは350~2,890円をプライスレンジとして44品をラインアップ。『魚がし どまん中』などの既存店は焼霜や炙り、湯引きなどひと仕事を加えた刺身の盛合せが名物メニューだが、『D-DRAGON』はそれを下地にしながらよりご馳走感を増すために肉刺身を盛り合わせた「鮮魚と肉刺し5種盛り合わせ シモキタ盛り」(1人前1,380円)を名物メニューに据えた。
その他には、「炙りカニ味噌の香箱甲羅」(1,480円)や「鰻とフォアグラの春巻き」(600円)といったご馳走感のある一品料理、「雲丹いくら」(700円)や「鰻と発酵バター」(500円)など高級食材を盛りつけたつまみ寿司を用意。そこに豚の角煮をアレンジした「ドラゴン肉の角煮シーニ」(1,800円)など遊び心のある商品を織り交ぜてヌケ感をプラスしている。
各店のオープニングメニューは専務の杉山一道氏が開発しており、それらの商品開発のポイントを次のように説明する。
「『魚がし どまん中』は刺身に生簀の活魚を用いるなど、ハイバリュー、ハイクオリティの商品がグループ店に共通する売りですが、そうした商品価値に加え、『D-DRAGON』で重視したのが『映え』です。外食店の販促手段としてSNSの重要性が高まりつつあり、特にセレカジ業態はSNSにおける情報発信力が高い。SNSマーケティングと結び付きが強いという点も業態開発、商品開発のアプローチが既存店と異なります」
