『ワタミ』は備蓄米購入、『吉野家』『すた丼』は麺展開。外食チェーン各社の米価格高騰対策
米の長期的な供給不足や価格高騰、そして政府による備蓄米の売渡しは、外食チェーン各社の戦略に変化を与えている。本記事では、大手飲食チェーン各社の最新の動向や対策をまとめた。
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『ワタミ』など約170社が政府備蓄米の購入を申請
農林水産省は、政府備蓄米の随意契約による売渡しについて、先の申込みが殺到したことを受け、6月20日より外食・中食・給食事業者などを対象とした追加の買受申込み受付を開始した。その結果、6月30日の受付終了時点で、この枠には約170社から約1.6万トンの申込みがあったと発表した。
政府備蓄米の随意契約とは、政府が売渡価格や数量を任意に決めて供給する仕組みだ。これまでの競争入札よりも価格が引き下げられることが期待されている。
外食大手のワタミは、約100トンの購入申込みを行ったと発表した。これは主に宅食事業の『ワタミの宅食』で使用するとして、一部の米は、ワタミが支援する『SAJこども夢食堂』でも活用したいと、同社会長兼社長の渡邉美樹氏は述べている。
『吉野家』、創業以来初の麺メニューで米高騰に対応
一方、大手牛丼チェーン『吉野家』は、創業以来初となる麺商品を2025年7月5日から全店舗で発売する。商品は「牛玉スタミナまぜそば」(767円)。『吉野家』秘伝のたれで煮込んだ牛肉と玉ねぎに、まぜそば用に開発した特製だれを加え、滑らかな食感の麺に絡ませているのが特徴だ。
吉野家ホールディングスは『せたが屋』や『ばり馬』といった人気ラーメンブランドを傘下に持ち、ラーメン事業の海外展開にも積極的だ。中期経営計画では、2034年度までに「ラーメン提供食数世界一」を達成する目標を掲げており、今後さらに麺事業を拡大していく方針とみられる。
『すた丼』も新業態『伝説の肉そば屋』で麺事業へ参入
丼チェーン『伝説のすた丼屋』などを展開するアントワークスは、新業態『伝説の肉そば屋』を立ち上げて麺事業に参入。5月8日に東京・御茶ノ水に1号店をオープンした。
看板商品の「秘伝のニンニク醤油肉そば」(913円)は、『伝説のすた丼屋』が創業した昭和46年(1971年)から受け継がれる秘伝のニンニク醤油ダレを使用。このタレで炒めた豚バラ肉を、老舗製麺所と共同開発した全粒粉入りの特製麺に合わせた“唯一無二”の肉そばだという。
同社が麺業界に新規参入した理由について、長引く物価高騰や将来的な米供給不足が懸念される中でも、創業以来の「旨いものを腹いっぱい食べて頑張ってほしい」という想いを守るため、と説明している。
米の価格高騰を受け、変化する外食チェーンの戦略
大手飲食チェーンも、備蓄米の活用で米の仕入れ価格を抑えたり、供給・価格が比較的安定している小麦を使った麺商品を強化したりと、さまざまな工夫でこの逆境を乗り切ろうとしている。各社のこうした対策は、今後の外食産業の行方を占う一つの指標となりそうだ。
