「カリフォルニア×日本」で集客に成功。池尻大橋のカフェレストラン『マッシーフ』の店づくり
時間帯によってカフェからレストランへ。様々な表情を見せる
『マッシーフ』は、昼間は自家製ペイストリーとコーヒーが楽しめるカフェ。夜になるとヨーロッパやアメリカ、さらには中東やアジアの料理をベースに、日本の食材を使って表現したイノベーティブな料理とワインが楽しめるワインバー・レストランへと変化する。来店するのは、地元の人や流行に敏感でおしゃれな飲食店が好きな女性たち、ワインラバー、さらには「大橋会館」に宿泊している外国人観光客など幅広く、年齢層も様々だ。
店名の『マッシーフ』とは「山塊」という意味があり、山が連なって塊状になっている地形のことを表す。レストランを一つの「山塊」に見立てて、時間帯によって業態が変化し、山々のように異なった表情を見せることから、この名にしたという。また「山塊」は時として、その地域の土壌や地質、天候などにも影響をもたらす。同じように、マッシーフの料理人やスタッフ、さらにはお客までもが一つの「塊」になり、東京のフードシーンやカルチャーに影響を与えたいという意味も込められている。
さらに、マックスさんが立ち上げた株式会社Terrain(テレイン)は、「地形」という意味を持っている。「これは、その土地ごとの地形や風土に沿って、何かを作り上げるという意味を込めました。そういったものを無視して一方的に作るのではなく、その土地の人々の考えや文化に沿って作り上げることが大切だと思っています」とマックスさんは話す。カリフォルニアの自然が常に身近にあったマックスさんにとって、自然への敬意はごく自然に身についたもののようだ。
東京らしい料理で外国人観光客を魅了。日本人客には海外にいるような体験を提供
『マッシーフ』では、カフェタイムに楽しめる自家製のクロワッサンやデニッシュなどが人気だ。土日のみ「サワードウフォカッチャのバインミー」(1,700円)や「アサリと春の豆の自家製タリアテッレ、メキシコ風チリオイル」(2,200円)などのブランチを提供しており、週末はこれを目当てに来店するお客で特ににぎわっている。現在、平日のランチ提供に向けて準備中だという。
ディナータイムに提供されている料理は、フレンチやイタリアンのような華やかな盛り付けがされることが多いが、例えば「北海道水蛸のグリル、里芋と酒粕、島らっきょうと青唐辛子」(1,800円)や「山口県ハモのフリット、ダブレ、焼き茄子、スモークヨーグルト」(1,800円)のように、多くのメニューで日本各地の厳選食材や日本ならではの食材が使われている。
「ミシュランレストランやファインダイニングではこういった食材は多く使われていますが、『マッシーフ』のような価格帯のレストランでは、少しめずらしいと思います。東京では安価で便利な食材を取り寄せることは簡単です。でも、そういったものを使って料理を作っても、みんな同じになってしまい、オリジナリティを出すのは難しいです」と話すマックスさんは、普段から食材の仕入れ先の開拓や生産者との付き合いにも目を配っている。
「この前は『キョン』(シカ科の小型の動物)を仕入れました。千葉でイベントを行った時に知り合った猟師さんが駆除したものです。『なかなか使ってくれるお店がないけど、実はとてもおいしいんだよ』という話を聞いて」と続けるマックスさん。どんな人とでも、日本語でコミュニケーションを取れることが彼の強みでもある。
日本ならではの食材を取り入れることで、来店した海外の観光客からは、「東京らしい食事を楽しめた」という声が多く聞かれるという。また逆に日本人客にとっては、外国人スタッフが多くボーダーレスな雰囲気を持つ『マッシーフ』は、海外のカフェやレストランに来たような体験ができる場所としても人気を呼んでいる。
