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飲食店の約7割が10%超の仕入れコスト増。独自調査で食材費高騰の実態が明らかに

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画像素材:PIXTA

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飲食店の経営において、食材費の高騰が課題となっている。総務省の発表によると、2025年9月の消費者物価指数は、2020年を基準として12.0%上昇した(2020年を100として総合指数112.0)(参考1)。実際、「飲食店ドットコム ジャーナル」が飲食店ドットコム会員を対象にアンケートを実施したところ、前年と比べて10%より多く仕入れコストが増加している飲食店は、全体の約7割にのぼることが明らかになった。

本記事では、この調査結果をもとに食材費高騰による飲食店の現状を紹介するとともに、農林水産省が発表した野菜価格の見通しも踏まえ、今後の対策などについて考察する。

■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:282
調査期間:2025年10月1日 ~ 2025年10月15日
調査方法:インターネット調査
※詳しい調査結果はこちら

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影響が最も大きい食材は「米」

まず、「食材費高騰で最も大きな影響を受けていると感じる食材」を調査したところ、半数を超える55.7%の飲食店が「米」と回答した。日本の食文化における基本食材である米の価格上昇が、多くの飲食店にとって負担となっていることが読み取れる。

さらに回答の多い順に「肉類(牛肉、豚肉、鶏肉など)」(46.5%)、「野菜(葉物、根菜など)」(41.8%)と続き、業種を問わず使用頻度の高い食材の価格上昇が影響を与えているようだ。

飲食店リサーチ「2025年9月の経営状況」に関するアンケート調査 Q7より

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90.8%が昨年よりも仕入れ総額が上昇

次に、「昨年(2024年8月)と比較した仕入れ総額の上昇率」を質問したところ、「11〜20%上昇」と回答した飲食店が35.5%で最も多く、全体の3分の1以上を占めた。

「昨年同月と変わらない」は6.7%、「昨年同月より下降した」は2.5%で、回答者の90.8%が昨年よりも仕入れ総額が上昇したと答えている。「1〜10%上昇」も24.1%と高いが、「11%以上上昇」した飲食店が全体の約7割(66.7%)に達しており、深刻なコスト増を経験している実態がわかる。

飲食店リサーチ「2025年9月の経営状況」に関するアンケート調査 Q8より

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最も効果的な対策は「値上げ」、しかし客離れへの懸念も

では、食材費高騰に対して飲食店はどのような対策を行っているのだろうか。最も効果的だった対策は「既存メニューの値上げ」が最多で62.1%を占めた。

次いで「新たなメニューの開発」(28.0%)、「食材の仕入れ先やルートの変更」(19.9%)が続いた。「原価率の低い食材への変更」(18.1%)や「食材の廃棄ロスを減らすための工夫」(18.1%)、「ポーション(盛り付け量)の調節」(16.0%)といった、コスト削減やオペレーション面での改善に取り組む回答も一定数見られる。

「値上げ」の回答率が6割を超えていることを見ると、他の施策よりも価格転嫁が最も直接的な対策として選択されていることがわかる。

飲食店リサーチ「2025年9月の経営状況」に関するアンケート調査 Q9より

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今後の見通しと飲食店がとるべき道

最後に、食材費高騰に対する今後の見通しについて、最も懸念していることを聞いた。寄せられた自由回答からは「値上げによる客離れ」を懸念する声が最も多かった。同時に「商品の品質は維持したい」という意見も次いで多く見られた。

1.値上げが引き起こす「客離れ」への不安
・食材費高騰でメニューの値上げをすることでお客さまが減る事が一番辛いです(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・食材費が上がる傾向は続くと思う。お客さまの機会減少傾向にならなければ良いと思う(東京都/中華/1店舗)
・値上がりによる外食離れ、または価格を維持できている店に客が流れて客数が減り経営を維持できなくなること(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

2.「品質は落とせない」という意見
・価格が上がりなるべく安いものを仕入れようとすると、素材が悪くなり、商品の品質が落ちることが懸念材料(大阪府/2店舗/カフェ)
・商品の質は落としたくないので、結果仕入れ値が高くなり、お客さんへの負担も増える。会計が高いとなり来店回数が減るなどが懸念点(埼玉県/バー/1店舗)
・これ以上の提供価格への反映が難しいため、経営努力で集客を維持しなくてはならない点が、大きな懸念点です(東京都/洋食/1店舗)

今回の調査結果から、多くの飲食店が「米」をはじめとする主要食材費の高騰による影響を受けていることがわかった。対策として「値上げ」が最も多く選択されている一方で、「客離れ」や「品質の低下」を避けようと苦慮している姿がうかがえる。

なお、農林水産省が発表した令和7年10月の「野菜の生育状況及び価格見通し」では、トマトやたまねぎ等の価格は平年を上回ることが見込まれる一方で、キャベツやレタス等の価格は平年並みで推移する見込みとされている。

こうした公的な価格見通しも参考に、今後の対策を考えておきたい。食材の価格動向に応じて柔軟にメニューを変更できる体制づくりや、旬の安価な食材を積極的に活用するなどの工夫を検討しておく必要がありそうだ。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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