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月商750万円売る南阿佐ケ谷の鉄板酒場『呑輝』。繁盛の秘訣は“お祭りワイワイ系”コミュ術

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『呑輝』を運営する株式会社達輝商店の代表取締役・杉本大輝氏

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『呑輝(のんき)』は、閑静な住宅街や昔ながらの商店街が広がる街、南阿佐ケ谷の鉄板焼き居酒屋。コンセプトは、店主・杉本大輝氏(40歳)いわく「ワイワイ系」。鉄板を挟んで積極的なコミュニケーションを図り、お客と一体となり盛り上がる、祭りの縁日のような非日常的雰囲気が最大のウリだ。開店1周年にあたる2025年8月には月商750万円を達成したという同店に、“元気な店”のつくり方を聞いた。

おしゃべり好き店主が会話を広げ、客の情報をキャッチ

『呑輝』の特筆すべきデータは、「ほぼ100%」というリピート客の割合である。近隣住民はもちろん、杉本氏が脱サラ後、5年間修業した株式会社バカワライの系列店、鉄板酒場『じゅん粋』(吉祥寺)などの常連たちも足繁く通う。一度足を運ぶと再訪せずにはいられなくなる、常習性の秘訣は何なのか。

営業中、常連客からご馳走になり一緒に乾杯するのが日課(?)の杉本氏は、酒やけしたしゃがれ声で、こう答えてくれた。

「やっぱり接客です。料理の味がお客さんに合う、合わないは十人十色。そこだけじゃなくて、最後のスパイスとしてお客さんとの対話の方が絶対的かなと思っています。全てのお客さんと世間話も交えながら、ひと言でもふた言でもしゃべるようにしています。それが多分、どんどん次につながっていくのかなと。コミュニケーションはすごく大事ですね」

南阿佐ケ谷駅から徒歩3分、阿佐ケ谷駅から徒歩10分の青梅街道沿いに立地

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新規客に対しても基本的には遠慮なく、「どこから来たのか」「何を見て来店したのか」といった質問から会話のヒントを探り、話を膨らませていく。例えば「〇〇から来た」と返答がきたら、自身の居酒屋業界での知見を生かし、「〇〇には××という店があって、そこの社長は私の知り合いだから今度飲みに行ってみてくださいよ」と薦めたりする。

ときには、ファッションをトークの糸口にすることも。「年配の方はゴルフをやっている方が多く、ゴルフメーカーの洋服を着て来店される方もいます。私もゴルフが趣味なので、気づいたらゴルフの話をしようと声を掛けます。元々しゃべるのが好きですけど、営業中の私はうるさいですよ」と、杉本氏は快活に笑う。

25坪の居抜き物件を改装。キッチンから目が行き届くように23坪へ縮小した。写真のやぐら風の小上がり席は開放感があり、親子連れにも好評

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接客を重視するからこそ、鉄板へのこだわりは人一倍

無論、グイグイ来られるのが苦手な客に対しては、空気を読んでトーンを落として接する。けれども放置するわけではなく、「BGMはうるさくないですか」「(空調は)寒くないですか」と気遣う。グラスが空いてカランと氷が鳴る音が耳に入れば、すぐ追加オーダーを取りに行く。帰り際には店先までお見送りすることも徹底。ただ単にノリが良いだけでなく、気配り、目配りが行き届き、さりげなくゲストの懐に入り込むのが、『呑輝』流の接客術といえるだろう。

杉本氏が鉄板焼き業態にこだわったのは、修業先の鉄板酒場『じゅん粋』がきっかけではあるが、一番の理由は「接客」に重きを置くからだ。

「鉄板だとまとめて何個も料理を作れるじゃないですか。作っている最中に手を動かしながら、目の前のお客さんと会話もできます。フライパンを振る調理や、お客さんに背を向けて調理するキッチンでは、しゃべるのは難しいですよね」

カウンターが『呑輝』のメインステージ。杉本氏はここに立つとエンターテイナーと化す(写真提供:株式会社達輝商店)

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開業前には、居酒屋だった前店舗の居抜きフロアをリフォーム。既存のカウンターは残したまま、横幅2m50cmの大きな鉄板を設置した。「やはりインパクトを出したかったので、デカめの鉄板にしました」と杉本氏。加えて、「なるべくフラットにしてお客さんとの壁をつくりたくない」ため、鉄板とカウンターテーブルの段差はほぼ皆無で、油はね防止のアクリル板さえ取り付けなかった。

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小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。