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神宮前『CENSU TOKYO』。香港発、東京を席巻する「新感覚IZAKAYA」の全貌

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『CENSU TOKYO』代表兼シェフの金須郁幸氏

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香港で「予約が取れない」と称された人気店が、東京・神宮前に「逆輸入」という形で上陸して2年(2023年7月オープン)。『CENSU TOKYO(センストーキョー)』は今、その独創的な料理と空間、国際色豊かな雰囲気で、東京の食通たちをも魅了している。

代表兼シェフの金須郁幸(きんすふみゆき)氏は、「ミシュランガイド東京」で二つ星に輝いたフレンチレストラン『タテルヨシノ』などで修業後、香港でも経験を積んだ人物。フランス料理出身者が、日本の伝統的な「居酒屋」のイメージを覆し、香港で独自に進化した「IZAKAYA」を東京でどう提案しているのか。多様な国際経験と独創性を活かした戦略に迫る。

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1階はシェフズテーブルスタイルのカウンター席。1階のみディナーは2部制を導入している(写真提供:『CENSU TOKYO』)

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香港、そして東京へ。ビザが導いた「逆輸入」の真相

金須氏のキャリアは、専門学校卒業後に入った『タテルヨシノ』(現在閉業)から始まる。その頃、のちにビジネスパートナーとなる佐藤峻氏と再会。二人は地元・仙台が同じ、そしてフランス料理出身という共通点があった。

「22歳か23歳の頃、『香港で店をやるから来ないか』と峻さんに誘われたんです」。金須氏は香港へ渡り、ファインダイニング系のベトナム料理店、そして佐藤氏が手掛ける「新しい居酒屋」をコンセプトにした『Fukuro』で経験を積んだ。しかし、コロナ禍でビザの関係により日本への一時帰国を余儀なくされる。

奇しくもその頃、佐藤氏は香港で自身がオーナーシェフとして新たな店『CENSU』の立ち上げを進めていた(2021年オープン)。金須氏は日本から遠隔でその立ち上げをサポート。当時は原宿の名フレンチ『シンシアブルー』(現在閉業)で働きながら、独立も視野に入れていた時期だった。

「ビザの申請を続けていたんですが、結局通らなかった。香港には戻りたかったんですが……。そんな時、峻さんから『CENSUの名前を使って東京でお店をやったら?』と提案されました。CENSUのコンセプトを一番理解している人間が、なぜか東京にいる。それが『CENSU TOKYO』の始まりです」

もしビザが通っていたら、この店は存在しなかった。偶然が重なった「逆輸入」だったのだ。

「ベトナム料理店での経験も活かし、最近ランチ営業でフォーの提供もスタートしました」と話す金須氏。ランチの客単価は1,200~1,500円ほどだ

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伝統的“居酒屋”の再定義。「五感」と「ハブのような場所」という“感覚(センス)”を大事に

『CENSU TOKYO』が掲げる「新感覚IZAKAYA」とは何か。金須氏はその核を「ハブ」と「五感」だと語る。

「店名の通り、扇子の要のようにここをハブとして人が集まり、扇子が広がるようにその繋がりが広がっていけばいいと思っていて。料理だけでなく、色々なジャンルの人が集まり、カルチャーが交わる場所ですね。そしてもう一つの意味であるセンス(五感)を刺激する料理、空間にしたいと思っています」

食べておいしいのはもちろん、盛り付けの美しさ、1階のオープンキッチンから伝わる音や匂い、そして音楽がこの店の魅力だ。BGMは香港の店舗とリストを共有し、誰もが口ずさめるような年代・ジャンルを問わない選曲となっている。

「変にかしこまる空間じゃない。日本にいるけど、日本じゃないような感覚。それを楽しんでもらいたいんです」

フリー客も利用できる2階席には、金須氏こだわりの一枚板のテーブル席があり、お客同士の交流も促す(写真提供:『CENSU TOKYO』)

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さらに伝統的な居酒屋との明確な差別化ポイントは、ドリンクメインではなく「食事メイン」であることだと金須氏は話す。

「自分も峻さんもフレンチ出身。だから『おいしいものを出す』ことが大前提です。和食という型にとらわれず、フレンチや、ベトナム料理、香港で親しまれている広東料理など、様々な要素を取り入れています」

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。