15坪で月商1,200万円達成。町田の居酒屋『酒とおばんざい いそいそ』オリジナリティの根源とは?
看板メニューに込めた“四季と原価最適化”の妙
料理は鰹節や昆布だし、薄口しょうゆを軸にした和食がベース。旬の野菜や魚介類をふんだんに使いつつ、食材のかけ合わせなどでオリジナリティを生み出す。盛り付けは色合いや形のバランスを意識し、素材の魅力が引き立つよう工夫。器も料理に合う和食器を選び、季節感や素材感を引き立てているという。
質の良い食材を扱う一方、数字の管理を徹底することで原価率は約31%をキープ。その鍵となるのが、「生ハムポテサラ」や「酒盗ブロッコリー」など、6種類のおばんざいをワンプレートにまとめた「おばんざい盛り合わせ」(2人前1,320円)だ。仕込みの手間はかかるが、注文率が高く、一皿ごとの分量も調整が効くことから、店全体の原価率のバランスを整える役割も果たしている。
隣県・神奈川県の「名産100選」にも選ばれる高座豚を使った「カツサンド」(1,430円)も人気メニューのひとつ。肉を揚げてから予熱でじっくり火を通しており、食感は驚くほど柔らか。薄切りのパンも香ばしく、衣との見事な一体感を生み出している。
TikTokが生んだ若年層の集客と採用の好循環
オープン直後から順調に売上を伸ばし、半年ほどで月商1,000万円を突破した『酒とおばんざい いそいそ』。急激に注目を集めるきっかけとなったのは、インフルエンサーによるTikTok投稿だった。「ありがたいことに、とあるお客さまが動画を投稿してくださいました。保存数が5,000を超えるほど閲覧されたらしく、それを人づてに聞いて僕たちも驚きました」と小林氏は話す。
近年、“若者の酒離れ”が進んでいると言われ、若年層中心のTikTokの投稿は居酒屋界隈では軽視されがちだが、動画を見て急増した若い世代も、酒と食事をしっかり楽しむお客が多いという。
「席の間隔が狭いため、満席になると少し窮屈に感じることもあるでしょう。そうした大衆酒場ならではの“密な賑わい”が、カフェのように利用するお客さまを遠ざけている面もあり、結果的に安定した経営に結びついています」と小林氏は話す。
TikTokの投稿は集客だけでなく、アルバイトスタッフの雇用にもつながったそうだ。3人で店をスタートした当初は、人手も限られ、さまざまな課題を抱えていたが、優秀なスタッフが増えるにつれて、接客の質が向上し、お客の満足度も上がった。
小林氏がスタッフに伝えているのは、訪れる人と「一人の人間」として向き合うこと。親身な接客は、店の雰囲気作りにも大きく影響しており、インターネット上の口コミでも高く評価されている。




