坪月商42万円を誇る学芸大学『居酒屋ホドケバ』。脱・属人化の組織づくりで“強い”飲食企業へ
「タイミー」活用を機に、誰でも働ける「型」を構築
人手不足への対策として、同社ではスキマバイトアプリ「タイミー(Timee)」も活用している。これは単なる欠員補充に留まらない。誰でもできる作業はタイミーや仕組み化で徹底的に標準化し、その分、高待遇で採用した社員には、人にしかできない接客や、お客との深い関係構築に全力を注いでもらうのだ。
「かつては社員比率が高く、阿吽の呼吸で現場を回していました。しかし現在は『ホドケバ』の場合、社員2名に対してアルバイト数名という構成にシフトし、比率はほぼ半々。外部の方が即戦力として動けるよう、マニュアルの整備を徹底しました」
「あれ取って」で通じる身内ノリを脱し、ハサミの定位置まで可視化したことで、初めて入る人でも迷わない環境が整った。この標準化こそが、既存スタッフの教育負担を減らし、サービス品質の安定と高い利益率を両立させる鍵となっている。
どんぶり勘定からの卒業。レシピ開発の自由を楽しむための「算数の約束」
アオギリコーポレーションの大きな特徴は、現場への圧倒的な裁量権だ。メニュー開発はアルバイトを含めたスタッフの提案を歓迎し、澤出氏自身は味見すらしないことも珍しくない。しかし、そこには明確なガードレールが存在する。
「以前は価格設定もどんぶり勘定だったんです。けれど2年前からメニューを提案してもらう際は、販売価格、原価、原価率、そして粗利を必ず提示することをルールにしました。経営側がチェックするのは、価格と見た目、そして粗利だけ。たとえ原価率が高くても、一皿で稼げる粗利(貢献利益)が適正であれば採用しています」
澤出氏が名古屋にある飲食店企業のぐっどくるダイニングを視察した際、20代の若手スタッフがKPIを意識して自発的に提案していた姿に感銘を受けたという。
かつては「なんとなく」で決めていた価格設定を、全スタッフが数字に基づいて判断できるまで落とし込んだ。具体的には、原価率が31%台と高くても、1品で約668円の粗利が確保できるオムレツなどは迷わず採用される。一方で、長年の「名物メニュー」であっても、原材料高騰で利益が出なくなり、適正価格への引き上げも難しいと判断した場合は、あえて終了させた。
現在、各店長は売上や目標、推しメニューを記載した「店長報告書」を提出し、月1回の会議で共有する。かつては深夜に飲みながら行われていたミーティングも、他社の視察を経て、今ではPCを手にKPIを語り合う組織的な場へと進化した。自由な空気感は保ちつつ、報告の型を整えることで、組織としての透明性を高めた形だ。




