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飲食店は個人経営と法人経営どっちが有利? メリット・デメリットを詳しく解説

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飲食店の経営が軌道に乗ってくると、個人経営のままが良いのか、それとも法人経営にした方が良いのか悩む経営者も多いのではないだろうか。近年、会社設立に必要な資本金の額や取締役の最低人数などが緩和され、会社設立がしやすくなった。つまり飲食店の法人化も行いやすくなったというわけだ。そこでここでは、個人経営と法人経営のどちらが有利なのか、メリット・デメリットを詳しく解説していく。

個人経営から法人経営に移行するきっかけとは

飲食店経営の目的は経営者によってさまざまだ。しかし、多くの経営者が利益増、節税、そして安定経営を目指しているはず。そうした観点で考えると、法人経営に切り替えることは色々なメリットをもたらす。

まず大きな節税効果が期待でき、事業継続のための適切な経営ができる。さらに法人化すれば社会的な信用を得ることができるので、事業拡大を目指す経営者にとっては、ぜひとも検討すべきだと言えるだろう。

ただメリットばかりではなく、もちろんデメリットもある。個人経営、法人経営、両方のメリット・デメリットを見てみよう。なお、本表の記述は2016年7月時点の税制に基づいている。

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注1:事業承継とは、会社の経営を親族または第三者の後継者に引き継ぐこと
注2:減価償却費とは、建物や設備など長期間利用する資産を購入した際に、その費用を耐用年数によって配分していくこと
注3:推計課税とは、帳簿がない、または不十分なため所得金額が不明なとき、税務当局が推定した所得金額で課税されること

モデル店舗を例に、法人移行について具体的に考える

法人経営が良いか、個人経営が良いかは、利益規模、事業拡大による節税効果、対外的な信用度の必要性、さらに事業承継に対する備えなど、さまざまな要素から検討する必要がある。そこでここからは、具体的な飲食店のモデル事例を設定し、個人経営から法人経営に移行すべき主なメリットと条件について説明したい。

【モデル飲食店の経営状況・環境について】
個人経営:青色申告事業者
業態:洋風居酒屋
店舗規模:12坪、28席

売上規模:年商2800万円
利益:年間540万円
従業員構成:店主、家族(ランチのみヘルプ)、アルバイト2名
店舗拡大予定:3年後に2店舗目を出店予定。銀行借入、テナントビルへの出店、人材募集を検討中
対外的な信用度の必要性:従業員募集やテナントビルへの出店のため信用度向上が必要な状況
事業承継:現在59歳、事業も順調で息子に数年後は経営を任せたいと検討中

1、節税のメリット
細かい節税額は条件によって変わるが、一般的に年間利益が500万円を超えるあたりから法人経営の方が節税ができる。モデル飲食店は、年間540万円の利益が出ているので法人経営への移行を検討すべき段階にきている。

2、信用度アップのメリット
モデル飲食店は、店舗を増やす計画があり、良い人材の募集、銀行借り入れ、テナントビルへの出店を検討中である。法人経営は、個人経営よりも対外的な信用度が高いので、融資を受ける際にも好影響を与えるはずだ。

3、事業承継でのメリット
モデル飲食店の経営者は、息子への事業承継を検討している。法人経営だと事業承継時にかかる税金を抑えることができるので、そうした視点からも法人化は大きなメリットになる。

モデル飲食店の事例では、節税、対外的な信用度アップ、事業承継の点から、法人経営への移行を検討すべき段階にきていることがわかった。このように法人経営を検討する際は、さまざまな観点から総合的に判断していく必要があると言える。

さて、利益規模や経営環境によっては、法人経営に移行することで大きなメリットが得られることを説明した。しかし、経営が不安定になり利益が減少すると、法人経営は継続的にコストが掛かってしまうため、逆にリスクを背負うケースもある。個人経営から法人経営への移行は、将来の事業予測や経営環境変化の予測を綿密に立てながら慎重に検討していきたいものだ。

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阪木朱玲

ライター: 阪木朱玲

IT関連のマーケティング、企画、営業技術担当を長年経験してきたデジタル人間。その反動で気ままに旅に出かけ、旅先での人情とおいしい料理に巡りあえることを楽しむのが大好きな芭蕉気取りの流浪人。長くIT、マネジメント、Webマーケティングがテーマの編集・ライティングを経験。今後は感性を揺さぶる食文化レポートを行いたい。