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ドバイで奮闘する日本人シェフをインタビュー。和食の伝道師として世界のセレブを魅了!

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ドバイの人気和食店『Sushi』に勤務する瀧尾嘉信さんと一緒に働く仲間たち

昨今の和食ブームにより、海外での日本食の人気は日々高まりつつある。外国人観光客の来日の目的として“和食を食べること”が一番に挙げられるほど、「寿司、天ぷら、すき焼き」に代表される和食の数々は世界中の人々を魅了している。

こうした和食人気を支えているのが、海外で活躍する日本人の料理人だ。今回は世界有数のセレブ都市・ドバイで腕をふるう瀧尾嘉信さんに話を聞いたので紹介したい。

もの作りの喜びを感じるために

UAE(アラブ首長国連邦)第2の中心都市ドバイ。世界中からセレブが集う都市として有名だが、瀧尾さんが相手にしているのは、まさにそのセレブたち。五ツ星ホテル「グランド ハイアット ドバイ」にある人気和食店『Sushi』で腕をふるっているのだ。まずは料理人を志したきっかけから伺った。

「実家も親戚も自営業で、飲食店を営んでいたんです。だから幼い頃から食に関心があり、周りには常に美味しいものがありました」

学生時代のアルバイトでは厨房に入って調理を経験したという。

「アルバイトを通じて料理を作る楽しさを体感することができました。もの作りが好きなので、自分の作った料理をお客様に喜んでもらえることに、自分でも喜びを感じます」

大学卒業後に上京し、料理人として歩み始めた瀧尾さん。飲食店で料理人として活躍したほか、メニュー開発に携わったり、撮影用の料理をスタイリングする仕事にも携わってきた。こうして調理だけではなく、食に関する幅広い知識や食文化についてもアンテナを張ってきたおかげで、現在は様々なアイデアや技術を生かせているという。取得している資格は調理師免許、フードコーディネーター、食生活アドバイザー、フードアナリストと、多岐に渡る。

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日本にいる時代はフードスタイリストとしても活躍した

なぜドバイへ?

ドバイへ移住した理由を問うと、開口一番、「海外に飛び出すのは勢いが大切ですよね」と微笑む瀧尾さん。仲のいい料理人から声をかけてもらったことがきっかけになったという。

「最初は働く場所がイスラム圏と聞いて不安もありました。“もうお酒は飲めないのか?”“豚肉は食えないのか?”など、生活・仕事・文化が一気に変わることに戸惑いを感じていましたね」

不安はありつつも、現在の会社と“Skype面接”をし、一日考えてからドバイ行きの答えを出した。実際にドバイへ来てみたらすぐに“来てよかった!”と気持ちも前向きに、それまでの不安も一気に吹き飛んだのだとか。

「長年、飲食の仕事をしてきましたが、どこも戦場のように忙しかったんです。でも同じ大変な思いをするなら、海外の方が良い経験になるな、と。もちろん海外で腕をふるうことで、たくさんの人に和食の良さを知ってもらいたいという想いもありました。特にUAEは日本人が少ないので、そうした意味でもチャレンジングで面白そうだと感じましたね」

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ドバイの五ツ星ホテル「グランド ハイアット ドバイ」

初めてづくしの海外生活

瀧尾さんは海外で働くのも、ホテル業界で仕事をするのも初めてだったという。

「今のキッチンメンバーは日本人、フィリピン人、ネパール人のチームで、僕は役職で言うとチームリーダーです。共通言語は英語になります。今までとはまったく違う環境なので、海外で働く難しさを肌で感じている毎日です」

「グランド ハイアット ドバイ」で働くスタッフは総勢3,000人! 日本人は瀧尾さんと料理長の2人だけという環境だ。

「英語もまともに話せない状況でドバイに来てしまったので、働く難しさは尚さらです(笑)。でも、日本の食材を使い、日本人として料理を提供する意味、そして技術をゲストにもスタッフにも伝えていけたら最高ですね」

ドバイはイスラム教の国であるため食事には様々な制限がある。豚肉や酒がNGなのはご存知の方も多いだろう。『Sushi』でもそのルールに則り豚肉の提供は行っていないが、酒に関しては、ホテルが酒提供のライセンスを持っているために提供しているという。

「日本のビール、日本酒も提供します。また、料理に使用する食材も、例えば魚などは築地から送ってもらっています。調味料もすべて日本のものを使用していますね」

瀧尾さんが働く『Sushi』はドバイでも有名店で、日本人だけでなく外国人ゲストも多い。場所柄、VIPや王族も来る環境なので「身が引き締まります」と瀧尾さんは語る。ちなみに中東のVIPたちはさぞかし大金を使っていくのかと思いきや、通常の食事ではいたってシンプル。しかし、バンケットやウェディングとなると、豪華絢爛な宴が執り行われるそう。

「五ツ星ホテルのサービスに期待して来られるゲストから“美味しかった”と言われる時は嬉しいですね。それに、ローカルの家族が箸を使って寿司を食べる姿にこちらもにっこりとします。あとは、世界中から集まったシェフたちと仕事ができるのはなかなかできない経験だと感じています」

忙しい日々を送っている瀧尾さんだが、先日、その努力が認められて9ヶ月連続売上目標を達成して表彰されたそう。最後に今後の目標を聞いてみた。

「日本人の料理人がとても貴重な国なので、もっと技術をあげて料理長になることを目標としています。そしていずれは他の国でも和食を広めていきたいですね」

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9ヶ月連続で売上目標を達成して表彰されたことも

食文化、生活習慣の違う国で和食を提供することは一筋縄ではいかない。一緒に働くスタッフたちもまた異なる食文化を持っていれば尚さらだ。

和食は世界的なブームが巻き起こりつつあるが、正しい和食の形を伝えていくことが大きな課題だと言われている。こうして瀧尾さんのような料理人が世界で活躍すれば、和食の魅力は正しく伝わっていくだろう。これからも「和食の伝道師」として世界中の美食家たちを虜にしてほしい。

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『Sushi』 瀧尾嘉信さん
1978年生まれ、北海道札幌市出身。函館大学を卒業後上京。東京で調理師として7年間活躍。和食、洋食、ダイニングレストラン、カフェ等で腕をふるう。その後、商品開発業務(ピザチェーン・コンビニ)を7年。また、経験を生かしフリーランスのフードコーディネーターとしても活動。2016年2月より「グランド ハイアット ドバイ」にある日本料理店『Sushi』にて料理人として勤務中。

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平田佐百合

ライター: 平田佐百合

情報誌の編集者として長くダイニングやホテル、エンターテインメントまで幅広い記事を担当。また中国上海にて、在留邦人向けに現地の勢いある飲食店情報を発信。ミシュランスターシェフのインタビューや飲食店スタッフとの交流から生まれた企画など、トレンドを織り交ぜた記事が得意。