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客同士がつながる仕掛けで坪月商65万円を達成。三軒茶屋『すこぶる』の“リアルSNS”戦略

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『すこぶる』オーナーの小林正貴氏

三軒茶屋のユニークな居酒屋『すこぶる』が人気を集めている。10坪22席の小さな店舗で平均月商は650万円。カウンターサービスを中心とした店員との密なコミュニケーション、そして客同士のつながりが生まれる不思議な空間で、常時10品を超えるおばんざいに、「注文率100%」の煮込みが次々とオーダーされていく。女性客が7割を占める華やかな店内も特徴だ。そんな繁盛店を率いる小林正貴氏に人気の秘密を聞いた。

ブロック塀の後ろの室外テーブル席で「遊ぶ」客たち

『すこぶる』の入口に立つと、この店舗のユニークさが分かる。民家でよく用いられるようなブロック塀の後ろに室外のテーブル席。室内のテーブル席なら6~8席は取れるスペースが、わざわざ室外席とされている。激しい雨になると利用が難しい室外席にするのは非効率なのは明らかだ。

しかし、そこに小林氏の思惑があった。「海外ではテラスや外の席で飲んでいる人が多かったりして、すごくカッコいいなと思っていました。人と人との結びつきを生み出すような店をやりたかったので、そういうフリーのスペースがあると遊べるなと思ったわけです」。客とスタッフだけでなく、客同士の結びつきを生み出す店を希望していた小林氏の発想から誕生した室外席が、店を発展させていく。「夏は知らない人同士が、立って飲んだりしているんです。それで、お客さんが歩いている人に『面白いから飲んでいきなよ』って言ってくれたり。自分が想定していたより、そのスペースを楽しんでくれていますね」と言う。

「注文率100%」の煮込み

「ウチは『リアルSNS』、店がコミュニケーションの場」

室外席の発想とともに、客とスタッフの間が近いカウンターが広く取れる店を探し、この物件と出合った。客の目の前で料理を作り、店員とのコミュニケーションが生まれ、それが横に座る客同士へのコミュニケーションへと発展する。居酒屋は楽しむ場所、そこで友達ができて、自分の居場所になる。昭和の頃の居酒屋や、喫茶店などに見られた光景を再現するかのような手法だ。

こうした戦略を立てたのは、“21世紀の今も実は、他者とのコミュニケーションを望む一定数の人々がいるのではないか、実名で参加するフェイスブックなどのSNSの存在が証明しているように思える”というのが原点である。「ウチは『リアルSNS』というか。インスタグラムもツイッターも、誰かに見てほしいという欲求、関わりたいという思いの現れですよね。それを実際の場でやりたい、店がコミュニケーションの場でありたいと。それが店を始める時(2013年)に一番やりたいことでした」。

今では満席の時は、店内の少し空いたスペースで立ち飲みする常連客もいる。それは気軽に飲めるという店の親しみやすさであると同時に、海外の立ち飲みバーの賑やかさのような独特な雰囲気の醸成に役立っている。外国人の客も増えており「主に欧米の方が面白がってくれますね。外で立って飲むことになじみがあるのか、自然とやってくれています」と語る。経営面から見れば、席数以上の客の確保につながっているのはいうまでもない。

週に2回来られるお店づくり、リーズナブルな料金設定

より濃密なコミュニケーション空間を形成するためには、頻繁に来てもらう必要がある。そこで「週に2回来られるお店づくり」を目指し、客単価を3000円前後にするメニュー開発を行なった。一人向きの料理なら量を抑えて、料金も抑えた。人気メニューの「おばんざい7点盛り」は680円。1点あたり100円を切る値段である。また通常のビールより高いヱビスビールが490円と500円を切っている。「ビールの値段で、大体の店の値段が分かるじゃないですか。三軒茶屋でヱビスを400円台で出しているところはあるのかな。それもグラスを小さくするわけではなく、普通のグラスですから」と言う。つまりビールの値段がリーズナブルな値段の象徴としての役割を果たしているのである。

こうした店の雰囲気作りの原点は店員のサービスである。ネットでの書き込みも「店員さんが元気」というものが多い。「それが一番嬉しいですね。料理やコンセプトも大事ですが、商売はやっぱり人です。従業員が輝いて仕事をしない限りは、どんな店をやろうが繁盛店には絶対になりません。お客さんを楽しませるため、美味しいものをつくるために彼らにはかなり裁量権を委ねています」。あえて接客マニュアルは作らず、従業員の自主性に任せている。店の前には従業員募集の張り紙があるが、そこには「採用基準 素敵な笑顔」とだけ書かれている。

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松田 隆

About 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/