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飲食店の損益分岐点の計算方法とは? 黒字経営をするために把握すべき3つの数字を解説

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Photo by iStock.com/Wavebreakmedia

飲食店を経営するまでの道のりはさまざまだが、「経営者」となれば、「数字」を見る力が不可欠。今回は「損益分岐点」に主に焦点を当て、損益分岐点を見るために必要な数字や計算方法、また黒字化するための具体的な方法なども紹介していく。

数字は苦手という方やこれから飲食店経営に取り組むという方も、損益分岐点を含め今回紹介する3つの数字を最低限把握しておくとよいだろう。

飲食店経営において大切な数字1:損益分岐点

損益分岐点とは売上と利益がイコールになるところ。現在赤字の店舗は、まず損益分岐点を目指す必要がある。詳しく解説していこう。

損益分岐点とは?

損益分岐点とは、その字の如く「損失」と「利益」の分かれ目、つまりお店の経営が赤字か黒字かのどちらかになる境目のことだ。例えば赤字経営が続いていたとしても、損益分岐点を把握することができると、あとどのくらい売り上げがあると黒字経営になるのかがわかる。

損益分岐点を計算することで、利益率を上げ、黒字経営が実現できたという経営者も多い。それくらい大切な数字のひとつなのである。

損益分岐点に必要な数字とは?

損益分岐点を計算するには「固定費」と「変動費」という2つの数字が必要になる。この概念を押さえておこう。固定費とは、売上が変わっても変わらないコストである。月額固定金額の賃料がこれにあたる。飲食店であれば概ね下記が固定費となる。

・家賃
・通信費
・リース料
・支払利息
・減価償却費

店舗を賃貸ではなく所有している場合は、返済費用ではなく減価償却費用として計上する。ただしローンを返済している場合、支払利息は固定費に当たる。業務用の冷蔵庫や厨房機器などを減価償却している場合は減価償却費として、レンタルしている場合はリース契約料として固定費に分類することになる。

一方の変動費は、売上に応じて変わるコストのことである。代表的なのは原材料費だが、以下のものも変動費となる。

・消耗品費
・販促費
・人件費
・光熱費

人件費や光熱費は毎月固定されている飲食店もあるだろうが、売上によって変動することもあるので、変動費として計算していくのが一般的だ。

飲食店の損益分岐点の計算方法とは?

固定費と変動費について把握できれば、損益分岐点の計算は意外と簡単にできる。計算式は下記の通り。

損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)

例えば、毎月の売上が300万円という飲食店で、固定費が100万円、変動費が210万円かかっているとする。損益分岐点の計算式に当てはめると

損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)=210万円÷(1-100万円÷300万円)

となる。これを計算すると、210万円÷0.67となり、損益分岐点は313.4万円となる。つまり毎月300万円の売上では損益分岐点には届いておらず、黒字経営するにはあと売上を14万円増やすか、経費を抑える必要があることがわかる。

このように毎月の経費を固定費と変動費に分類すると、損益分岐点を明確にすることができ、黒字経営か赤字経営かということがわかる。利益が出ているかどうか、いくら売上があったら黒字経営なのか、自店舗の数字を使って損益分岐点を確認してみるといいだろう。

黒字化をより明確にするための損益分岐点比率とは?

損益分岐点を明確にしたところで、損益分岐点比率についても確認しよう。損益分岐点比率とは、現在の売上がどのくらい上回っているのかがわかる指標のことで、計算式は下記になる。

損益分岐点比率=(損益分岐点÷売上高)×100

損益分岐点比率は低いほど収益性が高いことを示しており、一般企業であれば80〜90%、飲食店であれば90%が目安になる。前述した飲食店のケースに当てはめてみると、

損益分岐点比率=313万円÷300万円×100=104.3%

赤字経営となっているので、目安である90%を大きく上回っている。そのため早急に経営を改善する必要があると考えられる。

このように利益率の悪い飲食店の傾向としては、下記のことが想定される。

・料金設定に問題がある
・人件費が高い
・家賃が高い、など

この状況で黒字化を目指すのであれば、売上を上げるか、コストを削減するかのどちらかになるが、即効性があるのがコスト削減だ。ただし原材料費や人件費は売上とともに変動するため、削減しやすい光熱費や通信料、リース料などを優先的に見直すことが重要となる。大家さんに家賃の見直しを交渉することも一つの方法だ。

Photo by iStock.com/lucafabbian

飲食店経営において大切な数字2:売上高

損益分岐点を計算する際はもちろん、飲食店を経営するうえで大切な数字が売上高である。ただし、ひと言で売上高といっても、年間の売上、1か月の売上、1日の売上といったように期間ごとに分け把握しておく必要がある。

また、売上の変化やそこから課題や問題点を見つけるためには、売上を分解して考える必要がある。では、どのように分解して考えればいいのだろう?

基本の考え方は「客数×客単価」である。例えば売上が減っているのであれば、客数が減っているのか、客単価が減っているのかによって打つべき手も変わってくる。客数が減っているのであれば、お客様が来てくれるような施策が必要となる。一方、客単価が減っているのであれば、来てくれたお客様がより多く注文してくれるような施策が必要となる。

客数と客単価に分解することに慣れてきたら、もう少し分解して考えてみるといいだろう。客数は新規客と既存客に分けることができる。どちらを増やしたいかによって打ち手も変わってくるだろう。また、客単価はさらに数と価格、つまり買い上げ数と1品単価に分解することができる。これらの数字を把握しておくと、より細かい分析が可能となる。

業態や立地によっては、売上を時間帯や曜日で分解することも必要となってくる。ランチとディナーの時間帯で客単価や客数が大きく異なる店舗も多いだろう。例えば客数の変化を考えてみても、ランチの時間帯の客数が減っているのか、ディナーの時間帯の客数が減っているのかなどを把握することで、より効果的な打ち手を考えることができるはずだ。

飲食店経営において大切な数字3:FLコスト

最後に紹介する大事な数字がFLコストである。Fとは食材原価、Lは人件費のことであり、この2つの合計をFLコストと言う。前述した変動費の中でも飲食店経営にとって重要な要素だ。また売上に対するFLコストの割合を、FL比率という。それぞれ下記の計算式で求めることができる。

FLコスト=食材原価+人件費
FL比率=(食材原価+人件費)÷売上高

また、売上高に占める食材原価の割合を原価率、人件費の割合を人件費率という。原価率は飲食業で平均すれば30%程度と言われるが、同じ飲食業でも業態やビジネスモデルによって変わってくる。原価率を20%程度に抑える分、人件費をかけてサービスを重視する店舗もあれば、原価率を50%程度に設定して料理の品質を重視する店舗もある。計画通りの原価率になっているか、予定外に原価率が高い、あるいは低くなっていないかを確認しよう。

人件費に関しては、特にアルバイトの人件費の管理がポイントとなる。売上計画に対して適正なスタッフ配置ができず人件費率が高すぎると、スタッフが多すぎるという判断になる。逆に人件費率が低すぎると、スタッフが少なすぎてお客様に十分なサービスを提供できていない可能性もある。

一般的な飲食店ではFLコストは60%以内におさまると、利益が出ると言われている。逆に65%を超えると赤字の可能性が高くなると言われているので、基準の数字として把握しておくといいだろう。

Photo by iStock.com/cnythzl

今回は飲食店を経営する上で大切な、損益分岐点をはじめとする3つの数字について説明した。飲食店を健全に経営していくためには、数字に基づいた行動が求められる。自店舗の数字をしっかりと把握して、ぜひ次の施策を考えるために活用してほしい。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/