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飲食店の「模倣問題」もコレで解決!? 特許庁、店舗デザインを「意匠権」の対象とする方針

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※写真はイメージ。Photo by iStock.com/Sean_Kuma

飲食店、特に人気店が抱えるリスクのひとつに「模倣」がある。売上に好影響をもたらすと思われる外装や看板、メニューなどが“真似”されるケースは後を絶たない。飲食店にとっては店のすべてが戦略になるため、安易に真似され、地道に築き上げてきた信用やブランドを傷つけられることの影響は小さくない。

しかし、業界全体の疲弊にもつながりかねないこの問題が、遂に解決するかもしれない。特許庁が、デザインに関する知的財産権を保護する「意匠権」の対象を広げ、店舗の内外装についても保護することを検討していることがわかった。

「意匠権」とは、模倣の問題が起こらないようにデザインを財産として守っている知的財産権のひとつ。現在日本では、自動車、家電、文房具類、調理用品、携帯電話、時計などが保護の対象になっているが、店舗の内外装は対象外。この対象を広げ、店舗デザインを知的財産として保護していこうというのだ。

Photo by iStock.com/aluxum

大手外食チェーンで起きた“模倣”訴訟

対象外であるが故に、これまでたくさんの係争問題が起きてきた。焼き鳥チェーン『鳥貴族』では、ロゴマークやメニュー構成、そして外装や内装、従業員の制服まで模倣され、損害賠償を求める訴訟を起こしたことは有名だ(最終的に和解)。多くのメディアでも取り上げられ、何をもって模倣というべきか……と議論が紛糾した。

喫茶チェーン『コメダ珈琲』では、特徴的な外観である三角屋根や店内のソファー席の配置、食事メニューなどが模倣されたため、外観などの使用差し止めと損害賠償を求める訴訟を起こした。この訴訟では、店舗の外観が消費者に広く認識されているという「周知性」が認められ、使用差し止めの仮処分が下された。不正競争防止法により救済された結果となったが、日本で初めて店舗外観などについての差し止めが認められた点で注目された。

また、係争問題にはなっていないものの、日本の人気ラーメン店の店舗デザインやシステムを真似たと思われる海外のラーメン店が人気を集めるようになるなど、事例は多い。

Photo by iStock.com/AsianDream

外食業界の健全な競争を促すきっかけに

今後、店舗の内外装が意匠権の保護の対象となれば、自店をブランド化しやすくなるし、もし模倣が起きたときには、強制力をもってそれを排除できるようになる。特許庁では、優れた店舗デザインの模倣を海外企業からも防ぐことで、日本勢のブランド力向上を後押しすることも狙っているようだ。ただ、意匠権の権利は、特許庁に出願して「新規性」などが審査されて初めて発生するものだ。店舗展開をはじめるタイミングなどに合わせ、備えが欠かせない。

意匠権の保護対象の拡大は、自店のブランド化、差別化と今一度向かい合うきっかけになるとともに、外食業界の健全な競争を促してくれるだろうと期待される。

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岩﨑美帆

ライター: 岩﨑美帆

1982年生まれ。NPO活動に没頭した 大学時代、塾講師、広告営業を経て、フリーライターに。食・健康・医療など生と死を結ぶ一本線上にある分野に強い関心がある。紙媒体、Web媒体、書籍原稿などの執筆の他、さまざまな媒体の企画・構成の実績がある。好きな言葉は「Chase the Chance!」