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飲食店の人件費をうまくコントロール、削減する方法は? 経営者が着目すべき3つの数字

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Photo by iStock.com/Koji_Ishii

飲食店経営においては、人件費を正確にコントロールすることが利益を出すための一番の近道だと言われている。しかし実際には、日々の運営やメニュー開発などに追われ、人件費についてのノウハウ習得や管理が後回しになっている店もあるかもしれない。そこで今回は、人件費の基本解説から、上手な管理方法まで、人件費に関する知識と考え方を一気におさらいしてみよう。

そもそも人件費とは?

人件費とは、雇用している社員やパート・アルバイトに支払っている給与総額のこと。賞与や通勤手当などの諸手当、社会保険の金額なども人件費に含めて計算するのが基本だ。売上に対する適正な人件費率は25〜30%程度で、食材原価(Food cost)と人件費(Labor cost)を合わせた「FLコスト」は、売上全体の55〜60%程度に抑えることが飲食店経営の基本とされている。

また、家賃のように毎月支払う金額が同じ経費のことを「固定費」、食材原価や人件費などのように、毎月の金額が増減するものは「変動費」と呼ばれているが、当然ながら変動費の方が管理が難しい。特に人件費や食材原価はボリュームが大きな変動費のため、厳密に管理しないと利益を圧迫してしまう危険性もある。反対に、人件費をしっかりと管理することができていれば、利益が出やすい経営体質だと言えるだろう。

近年の人件費に関する課題は…

2018年10月に最低賃金が引き上げとなり、東京都は最低時給が985円、大阪府は936円と過去最高となった。それでも、長時間勤務の印象の強い飲食業は人材確保が難しい状況だ。そのため、近年は外国人労働者の採用も非常に目立っている。トラブル防止や顧客満足度を下げないようなマニュアルの整備も必要だ。

また、スタッフを採用するにも費用がかかることを忘れてはならない。店頭での告知などで採用が決まれば無料で済むが、実際には求人広告による募集がほとんど。アルバイトスタッフ1名にかかる「採用コスト」は5万円以上とも言われている。また、せっかく採用しても短期間で辞めてしまったり、シフトを埋めるために多数のスタッフを採用しなければならないなど、難題が並んでいる。

Photo by iStock.com/daruma46

人件費管理のための基準

このように、課題が多い人件費だが、適正に管理するための基準があるのでぜひ活用してほしい。

■人時売上高
スタッフの労働時間1時間ごとの売上高を表した数値のこと。「売上高÷従業員の労働時間」で計算する。基準値は4,000〜5,000円程度。例えば、1日あたりの目標売上が20万円で、8時間勤務するスタッフを5名勤務させていれば、売上高20万円÷従業員の労働時間40h=5,000円で適正となる。

■労働分配率
粗利高に占める人件費の割合のこと。「人件費÷粗利高×100」で計算する。40%以下が基準値。例えば、月間売上が300万円、食材原価率が30%で月間90万円の場合、粗利高は300万円-90万円=210万円。人件費が100万円であれば、人件費100万円÷粗利高210万円=労働分配率は47%で基準値オーバーとなる。労働分配率40%以内に抑えるためには、人件費を84万円以下にする必要がある。

■労働生産性
従業員1人あたりの生産性を示す指標。「粗利高÷換算人員」で計算する。基準値は50〜60万円程度。例えば、週40時間勤務のスタッフが2名と週20時間勤務のスタッフが3名いる場合、週40時間勤務を基準とすると、全員の総勤務時間140h÷40h=換算人員3.5名となる。粗利高が210万円であれば、210万円÷3.5名=労働生産性60万円で適正となる。

もちろん、ただ基準をクリアすればよいというものではなく、適正値を意識することが大切だ。例えば、人事売上高を1万円にしようとしてもオペレーションや単価の設定に無理が出てしまう。一度いずれかの方法で数値を計算して、人件費の無駄はないか、またはスタッフに負担がかかりすぎていないかをチェックしてみよう。

Photo by iStock.com/daruma46

人件費をうまくコントロール、削減する方法

人事売上高や労働分配率で現状を把握したら、次は目標数値を決めて具体的な改善をしていこう。人件費がオーバーしている場合は、シフトの組み方に問題があることが多い。アイドルタイムや、忙しくない曜日にスタッフを多く配置してしまっているのだ。昨年同時期の売上データを参考に、無駄のないシフト組みをしよう。

オペレーションの改善も人件費削減には非常に効果が高い。例えば、ドリンクバーを導入する、料理の盛り付けを大皿中心に変更する、といったようなことでも人件費削減は十分に可能だ。人員をひとり減らすことができれば、月あたり数十万円のコスト削減になることも。また、セルフオーダーシステムやキャッシュレス会計も導入コストはかかるが検討の価値はあるだろう。

さらに最近では、AIによるシフト作成サービスも登場している。繁忙期や閑散期に応じたシフト作成、短時間勤務のパートなど多様な働き方にも対応。欠員が出た場合には、スタッフの特徴や応援実績を踏まえて、最適な候補者をAIが提案してくれたりもする。店長がシフト作成に費やす時間も減らすことができるので、まさに一石二鳥のサービスと言えるだろう。

このように、人件費というものは非常に複雑で扱いが難しいものだ。飲食店の売上は一定ではないので、人件費率も毎日変わる。まずは現状を把握し、数値を管理できる体制をつくることが大切だ。感覚だけでシフト作成や採用を進めるのではなく、過去の実績や数値を元にした人件費管理で、さらなる経営改善を図ってもらいたい。

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大槻洋次郎

ライター: 大槻洋次郎

父親が喫茶店を営む家庭に生まれ、31才の時にカフェで独立開業。個人経営のこだわりカフェの先駆者的存在となった。現在は大手カフェスクールや展示会での講師活動、飲食店の開業支援などを行なっている。現場目線の初心者でもわかりやすいノウハウに定評がある。メディア出演も多数。得意料理はパスタ。