10年続く飲食店が大切にしてきたこと。ラーメン居酒屋『フカミ』が貫く「お客さま目線」

深いコクとマイルドさが絶妙なブレンドの「徳島ラーメン(生卵付)」800円
10年続いた秘訣とは?
三軒茶屋で徳島ラーメン、そして、隠れ家的な立地。“直感”で始めた『フカミ』だが、10年、店を続ける間、さまざまなドラマがあったようだ。
「最初は大変でしたよ。自分たちで宣伝はしないと決めたものの、それではいきなりお客さんは来ません。でも、うちのラーメンは採算度外視で、とにかく美味しいものを出すことを心がけていたんです。ラーメンの味もリピーターさんに違和感のないように少しずつ改良していますし。居酒屋メニューにも徳島の名産・阿波尾鶏を使った料理を数種類用意し、自家製のすだち酒を名物にするなど、さまざまな工夫をしました。そして、とにかく“美味しいものを出す”ということに関しては、とことんこだわりましたね。あと、当店では料理に化学調味料を一切使っていません。だから、秘策というよりは、とにかく自分が安心して行きたくなるような店として、やるべきことを続けてきたといった感覚ですね」

名産・阿波尾鶏による人気メニュー「鶏チャーシュー」880円
じつにシンプルな発想と努力であるが、「この、お客さまの目線に立って考えるという姿勢が、今思えば10年続けられた要因なのでは」と、深見氏は語る。また、名物のラーメンを味わう以外にも、気軽に飲みに来られる店として認知されていったことや、近隣にある店の経営者と仲良くなり、他店のお客さんも足を運んでくれるようになったことも成功の要因だという。さらに深見氏は次のように続ける。
「別に仲違いしたわけではないのですが、数年前に共同経営から、個人経営にシフトチェンジしたのが、僕にとってはよかったのだと思います。もちろん責任は重くなりますが、自分の考えを全面に打ち出せますからね」

徳島産・神山すだち使用の「すだちサワー」550円
この先10年の展望は?
10年続いたからといって安心はできないと、深見氏は鋭い眼差しを見せる。
「矛盾するかもしれませんが、真逆の方向性を2つ考えていまして……。ひとつは、今まで通りのラーメン居酒屋ではあるのですが、“ラーメン店”として認識している人がまだまだ多いので、ラーメンはあくまでもメニューのひとつであることを強調したい。でも、味はどんどん進化していくし、こだわり抜く。もうひとつは、あえて“徳島ラーメン専門店”にしてしまうこと。まあ、前者の方が今のところ可能性は高いですが。店の今後を考えるのは大変ではありますが、楽しいですよ」
最後に「同業者に向けて何か一言を」と聞くと、「いやー、あっという間の10年だったので、偉そうなことなんて何も言えませんよ。あ、でも、ラーメン居酒屋に限らずなんですけど、個人経営店を始めるなら、居抜きの物件を探した方がいいですよ。うちはスケルトンで始めたんで、借金返すのも大変で(笑)。7年目で無事に返済しましたけど」と、笑う。開業費用もしっかり回収して、次なるステップへと歩みを進める『フカミ』。次の10年に向けてどのように進化していくのか、今から楽しみだ。
『NOODLE AND BAR SANCHA FUKAMI』
住所/東京都世田谷区太子堂3-14-8
電話番号/03-5787-8376
営業時間/月・水・木・金・土19:00〜1:30、日19:00〜23:00、火Bar営業のみ
定休日/不定休
席数/20
