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外食ノウハウ活かしホテル事業に参入! そら・都築代表が目指す「コトづくりカンパニー」の全貌

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株式会社そら代表取締役の都築 学氏

『うっとり』や『焼鳥 佐田十郎』、『Azzurro520』といった人気店を手掛け、飲食業界でもひときわ存在感を放つ株式会社そら。2017年には「DNAを奮わせろ!」という新たなミッションを掲げ、「世界一のコトづくりカンパニー」を目指し邁進。ここ一年あまりで新業態のオープンが相次いでいる。

2018年9月には銀座一丁目に『しゃぶしゃき 綾邸』、2018年10月には恵比寿に『鮨よしかわ』、そして2019年3月には北習志野に『三ノ汁』をオープン。さらに2019年6月には浅草橋に『CAFE / MINIMAL HOTEL OUR OUR(カフェ アンド ミニマルホテル アゥア)』をオープンし、ホテル運営にも乗り出した。まさに現在、同社は第二創業期に突入し、“コトづくりカンパニー”へと変貌を遂げようとしている。同社の現在地と未来について、代表取締役の都築 学氏に語っていただいた。

新業態開発ラッシュの「狙い」と「意義」

━━昨年夏頃から、新業態の店舗が立て続けにオープンしています。その狙いはどこにあるのでしょうか

都築氏(以下、都築) いずれも1年半前に掲げた「世界一のコトづくりカンパニー」の実現を目指してつくったブランドです。「コトづくり」を店舗で具現化するため、業態コンセプトとして、視覚と聴覚、味覚、触覚、嗅覚の五感で体感できる店づくりをしています。

新業態の方向性は2つあります。それがオンリーワン店舗とコックレス店舗です。オンリーワン店舗は職人の力を際立たせたブランドで、その第一号店が『鮨よしかわ』です。もともと大将の吉川貴将は、寿司職人として13歳から修業を開始して十分なキャリアを積んできました。その能力をさらに発揮してもらえるように、「コトづくりプロジェクト」の一環として『鮨よしかわ』をつくりました。

一方、『しゃぶしゃき 綾邸』と『三ノ汁』は、コックレス店舗への挑戦です。近年、当社には新卒入社の社員が増えました。早くから活躍したいと考えるモチベーションの高い子も数多くいます。そうした気持ちに応えたいという思いが、新しい業態の誕生に結び付きました。

株式会社そらの新しいチェンジについて語る都築氏

━━『鮨よしかわ』では寿司業態に初めてチャレンジしています。その特徴を教えてください

都築 これまでの高級寿司店ではなかなか体験できなかったような「コト」をつくり出しています。大きな特徴は、既存の高級寿司店のネックを解決して、僕たちなりのエッセンスを加えて提案をしている点です。例えば、高級寿司店ではビールが1,000円したり、ハイボールが800円したりするケースはたくさんあります。また、大将のおまかせと言われも、最終的にいくらになるのか分かりません。しかも、今まではそれが当たり前だとされてきました。

僕たちはそうした常識を変えて、もっと気軽に使ってもらえる寿司店をつくろうと思いました。『鮨よしかわ』は完全予約制で、メニューは「大将おまかせコース」のみです。しかし、通常会員様には12,000円、クラウドファンディングの会員様にはグレードアップした「スペシャリティーコース」を15,000円で提供しています。しかも内容は最高ランクの食材を使った江戸前握りやシャンパンをはじめとしたドリンクなど、高級寿司店と遜色はありません。それでどんなに食べたり飲んだりしても、15,000円以上掛からないように設計しています。

「鮨よしかわ」の雰囲気は、高級寿司店そのもののラグジュアリーさ

━━クラウドファンディングを活用されたのですね

都築 現在、飲食店の割引には以前に比べて価値がありません。それどころか割引をした結果、ブランドの価値低下にもつながる可能性があるのです。それよりもクラウドファンディングを使って、出資者しか受け取れない価値を与えた方が喜ばれます。そうした理由もあって、あえてクラウドファンディングを使ってファンづくりを行いました。

━━一方で『三ノ汁』は初のそば業態です。どのような経緯があって、そばに挑戦をされたのでしょうか

都築 現在、日本の若い人材が串打ちやそば打ちなどをやりたがっていません。日本の食文化をしっかりと守れるかどうかの分岐点に来ているのではないでしょうか。そこで僕たちなりの提案を加えて、日本の食文化を次世代に継承したいと思い、『三ノ汁』を誕生させました。そもそもそば打ちは白衣を着て、和帽子をかぶってやるイメージがあります。一方で、イタリアンやカフェなどの業態では金髪やピアスの方も珍しくありません。つまりはファッショナブルでかっこよく働けるのです。

以前、そばは稼げる業態で、そこに価値を感じる方がたくさん集まってきました。しかし時代が変わり、現在の若い世代は、自分らしく働ける環境を選ぶようになっているのです。そうした感性を大切にしながら働ける環境をつくれたら、もっと人が集まるのではないか。そう考えて、業態を組み立てていきました。

同社ならではのエッセンスも盛り込んだ『三ノ汁』のそば

━━カフェやイタリアン業態も展開されているからこそできる提案ですね

都築 はい、いずれ僕たちは『三ノ汁』で海外へ進出したいと考えています。例えば、ニューヨークに出店すれば、ピアスをしたイカツイ人がそばを打っている光景が当たり前になるかもしれません。それを日本に逆輸入すれば、さらなる文化の発展につながっていくでしょう。

━━『三ノ汁』は夜にはしゃぶしゃぶを楽しめる居酒屋に変わります。『しゃぶしゃき 綾邸』で得たノウハウが生かされているのですか

都築 ええ、大いに役立っています。『しゃぶしゃき 綾邸』は自治体とタッグを組んで、つくったブランドです。「世界初の発酵熟成豚を使ったしゃぶしゃぶ」や「14部位を楽しめる」といったキーワードで打ち出して、食べ比べなどの「コト」を提案しました。しかし、時代の1歩先、2歩先を行ってしまったようです。そこまで求めていないという反応をされたお客様もいましたから。一方で『三ノ汁』は好評なので、トライ&エラーを積み重ねながら、今後も時代の半歩先をいくブランドをつくっていきたいと考えています。

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三輪大輔

ライター: 三輪大輔

歓楽街情報誌や放射線技師専門誌、歯科衛生士の求人誌などを経て、2014年に独立。現在、『月刊 飲食店経営』の編集委員をつとめるなど、外食業界の取材を精力的に行う。これまでインタビューをした外食企業の経営者は100名を超える。