ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
powered by 飲食店.COM ログイン

低予算でゴーストレストランを開業。シェア型厨房『キッチンベース』利用者が語るリアル事情

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『キッチンベース』に出店している『マティーニバーガー』のシェフ知花さん

飲食業界に新たな可能性をもたらしてくれるのでは、と話題の『Kitchen BASE(以下、キッチンベース)』。2019年6月18日、中目黒駅からほど近い場所に誕生した「シェアキッチン」である。

『キッチンベース』には複数の飲食店が入居しているが、ここに入居している店舗はすべてデリバリー専門店だ。「Uber Eats」や「出前館」などを活用しながら、料理を商品として販売、デリバリーしている。

「シェアキッチン」とは実際どのようなものか? 『キッチンベース』を運営する株式会社SENTOEN、そして入居する飲食店、双方に話を聞きながら「シェアキッチンの可能性」を探った。

『キッチンベース』を開くまでの紆余曲折

「シェフのみなさんが『キッチンベース』を通して、生き生きと働けるようになってくれたら嬉しいです。みんなが楽しく、収益を保てて、健康的に働ける場所を作りたいと思っています」

そう語るのは、株式会社SENTOEN 取締役COOの野原陽平氏である。なぜ『キッチンベース』のような事業をスタートしたのだろうか。それを知るには野原氏たちの軌跡をたどる必要がある。

シェフが夢を叶える場としても機能する『キッチンベース』

もともと野原氏と、同社代表取締役CEOの山口大介氏は大学時代(中央大学法学部)の友人であり、サークルの仲間だった。大学卒業後、野原氏は商社へ、山口氏はニューヨーク州立大学へ編入し、卒業後はIT企業に就職。それぞれの道を歩む一方、SENTOENの仲間と横浜の銭湯をプロデュース。運営はもちろん、イベント企画など、多種多様なコミュニティ作りにチャレンジしてきた。飲食に興味を持ったのは昨年と意外にも最近だ。しかも飲食は全員未経験というから興味深い。

「もうひとりの社員であるエンジニアの佐久間も含め、全員が飲食は初心者でした。食は身近なものだけに、僕らの大学時代の友人も次々と飲食業界へ就職しました。でも話を聞いていると飲食業界の現状に疑問を持つようになったんです。まず、働く環境が辛そうに見えたし、時間をかけて下積みを重ねても大成するのが難しいという印象がありましたね」

友人たちの働く様子から、飲食業界が抱える問題を目の当たりにしたという野原氏。『キッチンベース』の構想は、こうした問題を解決するために生まれたのだという。

「僕が留学中に大変お世話になった方が、都内でサンドイッチレストランをオープンしたんです。でも、1年程度で閉店に追い込まれてしまって……。開店資金に1,000万円から2,000万円もの大金をかけて店を開いたとしても、1年で3割近くの店がつぶれてしまう。それが飲食店の開業者の現実です。その状況を少しでも変えたい、シェフの働き方を変革したい、そう考えてたどり着いたのがシェアキッチンスタイルのゴーストレストランでした。この構想を、さきほどのサンドイッチレストランのオーナーに提案し、『キッチンベース』のプロジェクトが動き出したんです」

ゴーストレストランとは実店舗を持たず、デリバリーのみでサービスを展開するレストランを指す。シェアキッチンタイプのゴーストレストランはニューヨークでは定着しつつあるが、日本ではまだまだ珍しい。

飲食未経験、しかし様々なコミュニティを作り、社会の第一線でマーケティングを学んだ彼らならではのチャレンジが始まった。2018年9月、件のサンドイッチレストランの敷地を借りて試験運用し、デリバリー専門のサンドイッチ店を経営することにした。

「拠点としていた台東区にはデリバリーの配達員がほとんどいません。だからしんどいこともあったんですが、デリバリーはいかにリピーターを得られるかが大事だと考え、注文のたびにデータを分析しました。僕らの強みはデータ分析なんです。売上状況を見て味付けなどを逐一変更して、店をブラッシュアップしました。そしたら徐々にリピーターがついてきて、最初は3,000円だった売上が右肩上がりに伸びて1日平均8万円になったんです。そうこうしている間にデリバリー会社や配達員の方々との付き合いもできて、色々な話を聞けるようになりました。それで本格的に始めるなら『中目黒あたりがいいんじゃないか』と結論付け、物件探しを始めました」

中目黒はトレンドエリアのため、店を構えたいと考える飲食人も多い

周囲の意見を参考に、早速中目黒で物件を探し始めた野原氏。しかしシェアキッチンの場合、1店舗分の大きさで複数店舗のガスや水道、電気が必要になる。また、24時間中、人が出入りする運営状況に大家からは転貸を指摘する声があがるなど、道のりは決して平たんではなかった。

「物件探しをするうちに、中目黒エリアの不動産会社の名刺が150枚ほど集まりました(苦笑)。現在の物件はオーナーさんが僕らのビジネスモデルに理解を示し貸してくれたんです。デリバリーなので中目黒周辺であれば駅から離れていてもよかったんですが、結果的に駅から徒歩5分圏内の好立地に出店することができました」

『キッチンベース』では約20坪の広さのスタイリッシュな空間に、独立した4つの厨房設備や調理機材がある。日中は複数のデリバリープラットフォームを活用したデリバリー専門店、そして夜中から早朝にかけては宅配・仕出し弁当の仕込み場所として活用していく。

また、場所の提供のみならず、開業や運営に必要となるデリバリープラットフォームの登録手続きをはじめ、配達要員の確保や開業後のマーケティングサポートなどもすべて運営側が行う。さらに、売上や客単価、リピート率など、販売促進に必要となるデータを独自のシステムで算出し、分析結果をシェフに提供するなど、「シェフがトライしやすい環境」を目指した。今年2月、募集をかけたところ、実に100人以上のシェフから応募があったという。

「反響の大きさに僕ら自身もビックリしました。応募してくれた方全員に会ってビジネスプランとビジョンをうかがい、一部の方には実際に料理を作ってもらうなど、『Mr.CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)』を手掛ける田村浩二さんにもご協力いただきながらオーディション形式で審査をしました。デリバリーメニューで大切なポイントは『写真通りの綺麗な料理を早く作れるか』と『20分後に美味しいか』の2つだと思っています。それを軸にして、僕らが可能性を感じた方々にお願いしました」

こうして6月18日にオープンした『キッチンベース』。実際に出店したオーナーたちはどのような点に魅力を感じているのだろうか。続いて、野原氏が選んだ気鋭のシェフたちの言葉を紹介する。

Pocket
follow us in feedly

Foodist Mediaをフォローして最新記事をチェック!

ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
[PR]
逆井マリ

About 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。