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個人信用スコア活用し、飲食店と客をマッチング。TableCheckが目指す新しい未来

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フリージャーナリストの高口康太氏を中心に、幅広い議論が行われた

個人信用スコアはネガティブなものではない

続いてパネルディスカッションにて、「日本におけるデータビジネスの今後」と題して議論が行われた。司会はフリージャーナリストの高口康太氏が務め、谷口氏に加え、内閣官房IT総合戦略室参事官・吉田宏平氏、慶応義塾大学教授・大屋雄裕氏、株式会社J.Score 代表取締役社長CEO・大森隆一郎氏、株式会社クラウドワークス 執行役員・木村貢大氏、株式会社ネットプロテクションズ シニアプロデューサー・秋山恭平氏が参加した。

様々な業界における個人信用スコア活用についての議論が行われたが、ここでは特に飲食業界の話題に焦点を当てて紹介しよう。

個人信用スコアについて「悪用されるかもしれない」「個人情報が漏れるのが怖い」など、ネガティブな印象を持つ人は少なくない。株式会社TableCheckが実施した「『信用スコア』に関する消費者意識調査」によれば、「信用スコアについて理解している」と答えた人はわずか8%だった。どう活用されるかわからないからこその大きな不安があるようだ。

しかし、「メリットがあるのであれば利用したい」という消費者は約6割にも上り、情報がどう活用されるのかさえわかれば、利用しても良いと考える人が多いこともわかっている。消費者側のメリットといえば、先に述べたような特別メニューの提供や価格優待、優先的な予約などが考えられるが、これについて谷口氏は、「多くの飲食店はすでにアナログでやっていることですよね」と話す。

「例えば常連さんにちょっと安くしてあげたり、メニューにないものを提供してあげたり、予約を優先したりすることは多くのお店がやっています。個人信用スコアを活用すれば、これをより幅広いお客様に提供していけるのではないかと思います」

「個人信用スコア」について話す、慶応義塾大学教授・大屋雄裕氏

慶応義塾大学教授・大屋氏も、顧客のスコアリングは「決してネガティブなことではない」と話す。

「例えばTableCheckさんのスコアリングが悪くなったとしても、登録店舗以外では普通に食事ができますし、クレジットカード情報を登録すればまた利用できます。このことを考えると、人権をなくすほど厳しいというわけではありませんよね。また、無断キャンセルは特殊な事例でもなければ本人に責任があります。だから悪い扱いを受けることは正当。理不尽なスコアで悪い扱いを受けているわけではありません」

司会の高口氏もまた、「スコアが高い人はメリットを享受できる、低い人はクレジットカードを登録するとまた利用できる。低い人も一発アウトではないし、あくまで飲食店側がリスクヘッジをどうするかを考えたサービスと言えます」と話した。

飲食業界における「信用スコア」賛成派は約6割(テーブルチェック調べ)

飲食店とお客をマッチングする新しい未来に向けて

株式会社TableCheckのシステムは、今まさに試行錯誤しながら構築中だ。将来的には「お店とお客様を最適にマッチングすること」を考えているのだという。谷口氏は語る。

「例えば『一見さんお断り』というスタンスのお店がありますよね。これは決して、常連だけを相手に商売したいわけではなくて、変な人に来てほしくない、いい人に来てもらいたいということを指しています。あるいは、『うちは電話予約だけしか受けません』という飲食店もある。これは電話の話し方や声のトーン、言葉遣いなどでお客様の与信(信用度)を判断しているわけです。

とはいえ、電話でしか予約を取らないのは、お客様の幅を狭めることになりかねません。特にこれからも増えていくと予想されるインバウンドのお客様においては、時差や言葉の壁を無視してしまっているようにも感じます。よりたくさんのお客様に来てもらうためにも、ネット予約を活用しないのはもったいない。だからこそ、我々は個人信用スコアの活用をもっと大きなスケールで実行していきたいと考えています」

また、個人信用スコアの活用が広がれば、お店が想定している見込み客に対して、効果的なアプローチができるようになると谷口氏は言う。

「例えばお客様の利用店や利用価格帯などのスコアがわかっていれば、『このお客様に来てもらいたい』と、特定のお客様にダイレクトにスカウトのような形で宣伝をすることも可能になります」

司会の高口氏も「現在の総合的なスコアリングはメリットがぼやけてきています。飲食業界で個人信用スコア活用の成果が上がれば、活用の仕方を皆が考え直していくかもしれません」と締めくくった。

まだまだ認知度が低く、ネガティブな印象を持たれていることも多い個人信用スコア。しかし、情報の意義をきちんと理解し、活用すれば、飲食店にとってもお客にとってもメリットの多いシステムだと言えるだろう。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。