2020年は「おもて無グルメ」が外食シーンを席巻!? 新たな消費者ニーズに注目!
簡略化・効率化の先に、客を楽しませるフックを加える
自店舗のサービスを見直し、料理のクオリティーとコストパフォーマンスの高さから客の支持を得た「おもて無グルメ」の好例とも呼べる店舗のひとつに、東京都世田谷区のフレンチレストラン『ルナティック』がある。券売機で食券を購入することで料理の注文を行い、配膳と下げ物も客が行うというセルフ形式の店舗だ。オペレーションにかかる人件費が下がった分、「牛フィレステーキフォアグラのせ」(1500円)や「ロブスターのロースト」(1500円)など、本格的なフレンチ料理を低価格で提供し、客の満足度を高めることに成功した。
また、東京都品川区の『炭火焼ホルモン ぐう』は、2016年から3階部分を完全個室のセルフ焼き肉店『GU3F』として営業。1日2組限定の完全予約制で、品書きは前菜から締めまでボリュームたっぷりの5000円コース一本で勝負(飲み放題つき)。食事の提供と下げ物はスタッフが行うものの、今まで3階部分に割いていた一人分の人件費をカットすることに成功した。
「『GU3F』はプライベートな空間でセルフ焼き肉が楽しめるという付加価値があります。『ルナティック』にしても、食券でフォアグラを注文できてしまうという面白さと気軽さがある。単純にサービスを“省く”という発想ではなく、簡略化しながらも、消費者に新しい価値を提供していくことが重要なのだと思います」
「おもて無グルメ」は、例えるなら「LCC」のような存在
稲垣氏は「おもて無グルメ」の展望について次のように語る。
「今後、消費者は『おもて無グルメ』を実践する店舗と、サービスと料理の両方で高いクオリティーの店舗を使い分けるようになると考えています。例えるなら、LCCのような格安航空会社と、JALやANAなどのフルサービスの航空会社をシーンによって選ぶようなイメージです」
また、外国人観光客の集客、海外出店をするようなケースでも「おもて無グルメ」は相性がいいと言う。
「海外にはチップ文化があるように、サービスの価値と料理の価値を分けて考えている方が多くいます。そうした外国人と『おもて無グルメ』は相性がいいはず。外国人を集客したい、または海外出店を計画している店は、コンセプトの一つとして有効なのではないでしょうか」
昨年は軽減税率制度がスタートし、消費者の間で外食の価値を改めて見直す動きもみられた。そうした時代の流れの中で生まれた「おもて無グルメ」は、外食シーンに新たな価値観をもたらす強烈なキーワードになるかもしれない。今後の動向にも注目していきたい。