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“パン飲みイタリアン”の新鋭『チッツィア』。人とのめぐり合わせで今の自分がある

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パン職人であり、イタリア料理のシェフでもある馬場且江さん

近年「パン飲み」が注目されている。ワインを飲みながら、美味しいパンを食べられる店、それがパン飲みだ。『Cizia(チッツィア)』(品川区西小山)は、2019年11月のオープン以来、パン飲みの店として脚光を浴びている。が、この店はパン屋ではない。いろいろな美味しいパンも提供するイタリアンだ。馬場且江(かつえ)シェフが『チッツィア』を開業するまでの“紆余曲折”なストーリーを語ってもらった。

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洋食の料理人志望だったが、懐石料理の接客担当に配属された

「25歳で料理人を志し、際コーポレーションに入社しました。洋食の調理部門を希望したんですが……」

同社では中国料理店から日本料理店、イタリア料理店にいたるまで、様々な形態の飲食店を経営している。新入社員、馬場さんが配属されたのは懐石料理店。しかも接客担当だった。

「面接官に『まずはきちんとした作法を覚えてください』といわれました」

懐石料理店では覚えなければならないことが山のようにあった。和の食材はもちろん、九谷焼や備前焼などの焼きものの名前、生け花、茶道にいたるまで、日々勉強。

「今となってはすべてがつながっていました。うちの店では日本の食材を使ったイタリア料理をやっているので、日本の器や生け花や茶道を勉強できて良かったです」

イタリア料理はもちろん、いろいろなパンも食べさせてもらえる

懐石料理店の接客を3年務め、念願のイタリアンに。すぐに厨房に入れると期待したが、そうは問屋がおろさなかった。

「ホールを経験しなさいとシェフに命じられました。お客様の気持ちがわかるようになるし、料理を出すタイミングがわからないと厨房に入っても使いものにならないと忠告されたんです」

半年ほどホールを経験し、晴れて料理人になった。

自家製酵母と国産小麦で1日に数回パンを焼く

パン作りを学ぶため、有名ベーカリーに入社

際コーポレーションのイタリア料理店を数年経験した頃、ある願望が芽生え始めた。

「イタリアンのパンというとフォカッチャが一般的ですよね。でも、もっといろいろな美味しいパンを作りたいなあって」

パンを焼きたいので退社したい旨を会社に伝えたものの、認められず。パンを作りたいなら、店で焼けばいいじゃないかと諭された。

「いやいや、そうではなくて、パン屋でパンを作りたいんですって伝えました」

すったもんだの末、パン屋の就職が決まったら、辞めてもいいと許可が降りた。

「『パーラー江古田』のパンを食べて、働くならここだと決めました。『パーラー江古田』には美味しいパン、ワイン、料理の3つが揃っていたんです」

小麦は自らが製粉しているという

2011年11月、『パーラー江古田』のオーナー・原田浩次さんと面接、見事合格した。際コーポレーションでイタリアンの料理人を3年経験。次のステップとして、ゼロからパン職人の修業を始めた。朝3時から夕方6時まで工房に立ち、仕込みからパン焼きまですべてを学んだ。

「当時工房がまだ小さかったことから、原田さんから直接パン作りを教えてもらうことができたのが幸いでした。原田さんはオープン時間になると売り場に立ちます。オーナー自らが先人を切って働き、私達パン職人に指示を出す姿を学ばせていただきました」

『パーラー江古田』を2年で退社。パン職人の修業は2年で辞めるつもりだったからだ。で、その後どうしたのか。

「イタリア料理の修業を続けることにしました」

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。