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コロナ禍で加速する外食の「未来」。竹田クニ氏が語る「これからの飲食店」

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画像素材:PIXTA

これからの外食産業進化のテーマ

今回のコロナ禍は、未来を加速させるものだと考えています。これまでもお話ししてきた「これからの外食の価値とは何か?」を再考することが、市場の回復ではなく新たな進化、再興につながると思います。そのテーマについて、以下ご紹介します。

■「食のモビリティ(移動性)向上」「EC、D2C」
テイクアウト、デリバリー、通販の進化は、遠隔地でもクオリティの高い食を提供することを可能にします。これからの世の中は、人口減少、高齢化が進みますが、特に郊外・地方において世帯数が減少することから、飲食店や小売店の閉店・撤退が今後進む可能性が高いと考えます。

そうすると「車が無い」「健康上の理由で遠くへ足を運べない」などといった人々の食のクオリティが低下してしまう可能性があります。こうした消費者にクオリティの高い「食」を届けることは、社会課題に応える意味で大変意義のあることになります。EC、D2C(direct to Customer=卸や小売などのプレイヤーを経由せず、メーカーから直接商品を提供する)といった取り組みも同様に、「食のモビリティ」を高める取り組みだと言えるでしょう。

■「孤食化、個食化」
孤食(1人で食べる)、個食(グループや家族で各々が別の物を食べる)は、日本の世帯構成の変化に伴う部分が大きいと思います。現在、日本の世帯の種類別シェアでは、単独世帯(ひとり世帯)が全体の約35%ほどを占めます(出典:総務省「国勢調査」より)。「ホットペッパーグルメ外食総研 外食市場調査2019」によると、特に女性の「ひとりめし」は増加傾向が著しく、3年前との比較で約14ポイント増、「働く女性」という括りで見ると31ポイント増という驚くべき伸び率となっています。

こうした市場の状況を背景に、近年人気の「ひとり焼肉」やファミリーレストランの「お一人様席」など、ひとり需要に対応した業態や店舗づくりが増えているのです。また個食は、回転寿司で提供される寿司以外の多様なメニューや、ファミリーレストランのメニューなどにその傾向がはっきり見て取れます。

画像素材:PIXTA

■「パーソナル化」
例えば、栄養管理のアプリ、フィットネスクラブなどが提供する運動や健康のデータなど、個人が各々のデータを管理・活用する時代になってきました。個人の好みやヘルスケアニーズに合わせたテーラーメイド的な商品を求めるニーズが高まっています。例えばシャンプーでは、髪質、肌質、髪型などに合わせカスタマイズする商品が登場しています。食の世界ではまだまだ例は少ないですが、個人の好みや健康ニーズに合わせたカスタマイズは時代が求める価値と言えそうです。

■「イミ消費」
イミ消費は、数年前より提唱している概念で、

・1970~80年代「モノ消費」…満ち足りていない中「モノ」を買い求める 例)〇〇ブーム、ブランド信仰など
・1990~2000年代「コト消費」…モノではなく「体験」を売る 例)イベント、オフ会、女子会など
・2010年以降「イミ消費」…社会貢献、他者支援、環境保全、健康、文化継承など

という推移で、消費者の価値観が変わってきていることを表しています。近年、世界的に推進されるSDGs(持続可能な開発目標)もイミ消費の中のひとつと言えると思います。新型コロナウイルスの感染症の拡大は世界的なものであり、地球サイズで消費活動の変化への関心が高まり、特にこうした問題に敏感な若い世代が消費の中心になるにつれ、このような傾向は進むことが予想されます。

コロナを機に地球サイズで消費活動の変化が起こると予想

■「ジャパンプライド」「本物・素材感」「極み・進化形」
これらはトレンド寄りの話になりますが、上で挙げたような特徴(=価値)を備えた商品が消費者の支持を得ているようです。

日本の各地域が持つ特徴的な食資源を生かしたメニューや、日本固有の食文化に根差しそれを現代流に解釈したスタイリッシュな店(伝統の和スタイルや、昭和レトロの居酒屋など)が登場、これらは日本文化の再興という意味で「ジャパンプライド」と名付けました。「本物・素材感」は高級食パンや厚焼き玉子サンドなど、際立った上質の原料を使用したり本格的な製法にこだわったもの。「極み・進化形」はさらに成分や素材の特徴を際立たせた商品と言えます。

こうしたテーマの商品は、汎用的な商品よりもかなり高い価格設定でも売れていることが特徴で、そうした「価値」に消費者が「対価」を支払う、という理解ができると思います。

「CX」と「DX」がこれからの外食産業進化のキーワード

前述の外食産業進化のテーマは、コロナ前からお話ししてきたものであり、これらが加速して進んでいくと思われます。本稿でこれまでお話ししたように、コロナ禍によってテイクアウト、デリバリー、ECなど、様々な「提供態」が消費者に定着しました。これからはこうした「価値」が、どのような顧客の体験として提供されるのかが重要になってきます。それが、CX=「Customer Experience(顧客の体験価値)」です。

消費者が求めるのは単に「商品(メニュー)」だけではなく、それを店で、自宅で、あるいは自ら調理して……、同じメニューでも提供の仕方=顧客の体験が多様化するのです。そしてその「体験価値」に対して「対価」を支払う、このことが重要になると考えます。

消費者は「体験価値」に対して「対価」を支払う

一方で、こうした価値を実現するために、どのようなテクノロジーを活用するのかという視点が重要になります。オンラインでの注文、顧客データの蓄積と分析、安定して短時間の調理を可能にする技術、素材や料理を劣化させない冷凍技術や包装技術、そしてバックヤードでITによる業務効率化。これが外食産業におけるDX「Digital transformation(デジタル技術により製造や管理工程を変革し、社会の変化につなげる)」です。

これまでの外食産業では、こうしたテクノロジー活用は、必要性や重要性は認識しつつも、既存のビジネスモデルで相応の収益が獲得できていた中で、変革の効果とコストが懸案となることから導入・活用が遅れていました。コロナ禍によって外食産業は大きな痛手とともに、これまでのやり方を変革する必要に迫られているのだと思います。

価値に応じた対価を獲得することも重要になる

CXとDXの関係性は、上の図で示すように、目的と手段の関係にあります。従来から議論されてきた「生産性向上」は、DX導入によってCXの価値向上、そして価値に応じた対価を獲得することによって実現することができます。これは未曽有の危機への対応が、新たな進化を生み出すという構造に見えるのです。

元には戻らず、「進化」する外食産業

未曾有の危機に際し、まずは止血(キャッシュ)、命(経営存続)が最優先であることは冒頭で述べた通りです。この苦難は、外食産業が20世紀の成功体験から脱却し、イノベーションを起こし、新たな進化と発展につながると信じています。

このコロナ禍での取り組みは、その現象がそのまま延伸して未来になるわけではなく、背景で進む「消費者の変化」や、「飲食店が苦難の中で獲得する知見」の中に、次代の進化があると考えるべきではないかと私は考えます。

未曽有の危機から生まれた智恵や勇気が、技術や産業の在り方、人々の意識を変え、それがその後の時代を作るイノベーションに繋がる……。こうしたことは歴史上何度も人類が体験・体現してきたことではないでしょうか? 外食産業と、外食産業を支援する人々の力を結集して、コロナ後の外食産業の進化発展を作り上げていこうではありませんか!

竹田クニ
1963年生まれ。「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリスト、株式会社ケイノーツ代表取締役、日本フードサービス学会会員、一般社団法人 日本フードビジネスコンサルタント協会 専務理事、早稲田大学校友会 料飲稲門会 常任理事。マーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに講演、記事執筆、企業のコンサルティングを行うほか、外食、中食、給食を結ぶB to Bマッチングも手掛けている。

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