有楽町の純喫茶『ローヤル』。支配人が振り返る「半世紀以上も営業を続けられたワケ」

コロナ禍で苦しい経営を強いられていても「復活させるまでは負けられない」と語る野山氏
コロナの影響受けるも「復活させるまでは負けられない」
だが、そんな『喫茶ローヤル』も長引くコロナ禍で再び苦しい経営を強いられている。
「自粛期間は2か月間休業しましたし、再開後もお客さんの数は戻っていませんが、コロナなんかで店を閉店させたら亡くなった先代に申し訳ない。なんとか復活させるまでは負けられないですよね」
と、野山氏は自らを鼓舞する。そんな野山氏が先代の教えを守り、店がどんな状況でも欠かさず行っているのが、清掃の徹底だ。毎朝の店内清掃はもちろん、時間がある日は壁やインテリアの掃除、そして床のワックスがけやイスのクリーニングも自分たちで定期的に行っているという。
「特に布張りのイスは長年使っていると汚れやシミが目立つので、洗剤クリーニングをして乾燥させたイスと入れ替えながら使っています。これがなかなか大変な作業でね(笑)。男性従業員ばかりを雇っているのは、こうした重労働もある仕事だからなんです」
いつ訪れても店内のレトロな雰囲気を開業時のまま満喫できるのは、日々の小まめな清掃があってこそ。また、『ローヤル』はつい最近まで喫煙可能店として愛煙家たちのくつろぎの場になっていたため、なおさらキレイな店内環境には気を配ってきたという。

店内には喫煙室を設けている
昔ながらの喫茶店の良さを守る
だが、折からの受動喫煙問題や法改正により、長年続けてきた営業スタイルは変えなければならなくなった。
「交通会館内には共同の喫煙所があるので、店内は禁煙にする飲食店も増えましたが、ウチには『コーヒーを飲みながら一服するのが至福のひと時』と話すお客さんもたくさんいますし、それが昔ながらの喫茶店の良さでもあると思うんです。そこで、最初は店内の中央に自動ドアを設置して、完全分煙にしようかとも計画しましたが、ビル内の排気の問題など色々あって、できなくなりました」
結局、健康増進法の改正や東京都の受動喫煙防止条例の施行により、屋内は「原則禁煙」の方向に。紙巻きたばこの店内喫煙を続けるためには専用喫煙室を設置する以外に選択肢はなくなった。しかし、喫煙スペースの確保も「一筋縄ではいかなかった」と野山氏は振り返る。
「本当は店の一番奥に喫煙室を設置して、たばこを吸うお客さんは奥でゆっくりしてもらい、吸わないお客さんは空気の流れがいい店の入口付近に座っていただこうと考えていました。でも、喫煙室はスプリンクラーのある場所にしか設置できないという条件で、仕方なく店内に入ってすぐの場所につくることになりました」
喫煙室は定員2~3人の小さなキャビンタイプだが、たばこ粒子を強力に捕集できる高性能なもの。今後は席でこそ吸えなくなったが、「たばこが吸える喫茶店」の看板は守った。

喫煙室は定員2~3人の小さなキャビンタイプ
「たばこを吸うお客さんがいる以上、全面的に禁煙にするのではなく、吸えるような環境をつくるのも営業努力ですからね」
最近では「有楽町にレトロな喫茶店がある」と聞きつけた若い女性たちが多数訪れ、店の雰囲気やパフェなどの写真を撮ってはSNSにあげているという。「タダで宣伝してもらっているようなものだから、ありがたいですけどね」と顔をほころばせる野山氏。
昭和の純喫茶文化を今に残す喫茶店──。懐かしい店内やメニュー、そして懐かしいスタッフの面々が、今日も「くつろげる居場所」を求めてやって来る客を温かく出迎える。
『喫茶ローヤル』
住所/東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館B1F
電話番号/03-3214-9043
営業時間/8:00~18:30(土日祝は11:00~18:30)
定休日/交通会館の休館日
席数/95
撮影/内海裕之
