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時短要請を「時代の変わり目」と捉える飲食店も。ポストコロナへ動き始める外食業界

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画像素材:PIXTA

東京都は12月14日、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店などへ出していた営業時間短縮要請を2021年1月11日まで延長することを決定した。書き入れ時の12月も午後10時までに営業を終了する飲食店が増え、コロナ禍による閉塞状況は先が見えない。一般の飲食店は今回の時短要請をどう受け止めているのかを聞いた。

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25日間で100万円の協力金を給付

東京都は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、11月28日から12月17日までの20日間、酒類の提供を行う飲食店とカラオケ店を営む事業者に営業時間を午後10時までに短縮するよう求めた。要請に応じ、感染防止のガイドラインを遵守し、感染防止ステッカーを掲示する事業者には1日当たり2万円、合計40万円の「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金」を支給する。

このため200億円の補正予算を組み財源とした。1事業者に40万円の支給であるから、5万の事業者への支給を想定していたことになる。東京都の飲食店数は2018年末で19万2934(厚生労働省・平成30年度衛生行政報告例から)。少なくとも全体の25%程度は午後10時以降は営業していないという状況を想定したのであろう。

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今回は協力金が1日当たり4万円と倍増、期間も5日間延ばして25日間とし、1事業者あたりの支給額は2.5倍の100万円と一気に大型化した。予算は国費360億円、都の貯金から110億円の合計470億円。単純計算で4万7000の事業者に支払いが可能である。

なお、1つの事業者が複数の店舗を運営する場合、最低1つの店舗が時短要請に応じれば当該事業者に協力金が支払われる。不公平に思えるかもしれないが、とにかく時短要請に応じる店舗を増やし、感染機会を減少させることを考えた場合には合理的な方法と言える。

ちなみに8月3日から9月15日までの43日間も午後10時以降の営業自粛要請が出された。43日間で合計35万円(1日あたり約8140円)の協力金が給付されている。それ以前には4月11日から、緊急事態宣言に伴う休業要請(午後8時以降の営業自粛)が発出され、協力金として最大100万円が給付された。

12月に入っても感染者の拡大は止まらない。24日には888人と1日の新規感染者数で過去最高を記録、第3波はこれまで以上の勢いで都民の健康や生命を脅かしている。このような状況を考えれば時短要請の延長をやむを得ない措置と考える人は多いのではないだろうか。

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午後9時以降「そもそも人が歩いていません」

この状況下で都内の飲食店のオーナーはどのように感じているのか。台東区浅草の『博多串焼きハレノイチ』では、11月28日からの時短要請に応じて午後10時までの営業とし、さらに時短要請の延長にも応じている。

オーナーの板木駿一氏は総合的に判断し、要請に従うことにしたという。実際に午後10時以降の営業ができなくなることの影響については「2回転目、午後9時以降のお客さんが取れないので、そこの売上は落ちている感じはします。9時以降にお客さんが入ってきませんし、そもそも人が歩いていません。(時短要請に応じなかったとして)9時以降にお客さんが入るかといえば、入らないでしょう。よくて1組という状況でお店を開けていても仕方がありません」と状況を説明する。

こうした実利的な面に加え、『ハレノイチ』独自の事情も関係している。「当店の場合、住宅立地ですから、周りの目というのがあります」。午後10時以降も店を開けていれば近隣に不安を与えることにもなりかねず、ビジネスというより公共心から地域に不安をもたらすことは避けたいという考えが働く。「そうしたことを総合的に考えると、(時短要請に応じないで)やるメリットはないかな、ということです」と決定に至った経緯を語った。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/