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売上8割減を打破! 人気ハンバーガー店『ICON』がコロナ禍で導き出した新たな経営戦略

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代々木に移転オープンした人気ハンバーガー店『ICON』

新型コロナウイルスの影響により飲食業界は依然苦境に立たされている。この厳しい状況を打破するため、奮闘しているのが代々木にある人気ハンバーガー店『ICON』(アイコン)だ。

コロナ禍で売上は一時低迷したものの、今年に入ってからは代々木内で移転、さらに前店舗があった場所に姉妹店をオープンと、コロナ禍を力強く生き抜いている。オーナーの片寄雄太さんにコロナ禍での経営戦略を聞いた。

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『ICON』オーナーの片寄雄太さん

グルメバーガーは「アート」と「デザイン」を重視

マカロニとチーズが溢れ出る「マッカンバーガー」に、美しくスライスされたりんごが顔を出す「りんごバーガー」。ハンバーガーマニアの元バンドマンが作る独創的なグルメバーガーが人気を博し、連日行列を作ってきた。

『ICON』は2017年に開業。オーナーの片寄さんは、飲食店経営のほかにデザイナー、バンドマン、カメラマン、ライターの顔も持つ。その異例の経歴は以前の記事でもお伝えした通りだが、経営者としても異端児だ。

飲食店の料理の原価率は一般的に30%前後が望ましいと言われる中で、『ICON』のハンバーガーは原価率40~50%。「クオリティは絶対に下げたくない。赤字になったら、その分デザインの仕事で稼げば良い」と妥協を許さない。しかし、ものづくりに対する好戦的な姿勢とは相反して、普段はどちらかと言えば控えめな性格。

のんびりとした口調で「経営戦略、ですか……。実はそこまで深くは考えたことがないんです。スタッフも増えてきたので経営者としてきちんと考えていかなきゃなとは思っています。こうやってお話することで、自分の考えを整理できそうです」と苦笑いする。好きなものを、思いつくままに、が彼の信条である。

「仕事以前に、自分のイメージや考え、感情を表現したいという思いが強いんです。“アート活動”に近いものがあるかと思います。ただ、アートとデザインは別のもので、人に受け入れられる形に作り上げるのがデザインです。自分の思いとともにハンバーガーはしっかりとデザインを考えた上で、見た目や形状を作っています。それが運よく受け入れられたのかなと。もともと会社としてデザインの事業も継続して行っていたので、デザイナーとして仕事をしてきたことも活きたのかなと思います」

『ICON』のハンバーガー

コロナ禍の影響を受け、売上8割減を味わう

インパクトのあるグルメバーガーが評判となり、半年経ったところでメディアにも頻繁に登場するようになった。さらにはテレビドラマ『女子グルメバーガー部』(テレビ東京、テレビ大阪ほか)第7話の舞台となったことでも話題を呼ぶ。その実力が認められ、2019年には食べログ「ハンバーガー 百名店」にも選ばれた。しかし、売上が順調に伸びていた矢先、新型コロナウイルスの流行がはじまる。

「たくさんのお客様に来ていただけるようになり、毎月の売上はコロナが広まるまでは前月を上回り続けていましたが、2020年の4月は売上が前月から比べて3割まで下がりました。国の要請に従って時短営業に変えてすぐは8~9割減になったことも。なかなか客足は伸びずコロナの影響の大きさを痛感しました。しかし、近隣のお客様や、今まで混んでいて来られなかったお客様が来ていただけるように。テイクアウトのお問い合わせが少しずつ増え、テイクアウトも強化することにしました」

これまでも希望者にテイクアウト販売を行っていたが、バンズの焼き方などを調整して、冷めても美味しく食べられるよう工夫を凝らした。空いた時間は新しいハンバーガーのアイデアを考える時間に使ったり、アメリカ生まれのビールメーカー「Pabst Blue Ribbon Japan」(パブストブルーリボンジャパン)のサポートプロジェクトの協力・支援を受けたりと今できることに注力することで「辛いときこそ前向きに考えるように」心がけていたという。

「とはいえ、もともと少ない席数をさらに少なくしての営業になったことで、売上も限界に。(当時の)キッチンの大きさだとデリバリーの対応もそう多くはできない。そんな時に、代々木に良い物件を見つけました。コロナの影響で居抜きや空き物件は増えていましたが、規模の大きいところが多く、中小規模の物件は少なかったんです。見つけたのはもともと住居用の物件。居抜きがベストでしたが、今の店舗よりも駅に近く、広さもありました」

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逆井マリ

ライター: 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。