アフターコロナの「リベンジ消費」は限定的か。飲食店は新たな需要の開拓を
あらゆる我慢が強いられてきたコロナ禍。特に影響の大きかった外食や観光、エンタメなどの業界では、コロナ収束に向けて「リベンジ消費」への期待が高まっている。そんな中、野村総合研究所(NRI)は、コロナ禍が収束した場合の生活者の消費価値観や生活行動を把握するため、インターネット調査を実施した。今回は、その調査結果を紹介する。
調査期間:2021年7月22日~8月4日
調査対象:全国の満15~69歳の男女
有効回答数:18,800人
詳しい調査結果はこちら
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「リベンジ消費」による経済活性化は限定的
調査では、コロナ禍が完全に収束した場合、外食や旅行など各活動に対する個人の支出意向がコロナ禍以前の水準まで戻るかどうかを分析した。国内旅行については、「コロナ禍以前の水準よりもさらに多くする」「コロナ禍以前の水準に戻す」の合計が51%で、消費活動の再開に積極的な人が多く見られる。
さらに、ワクチン接種状況別に分析したところ、ワクチン接種を2回目まで完了している人のうち57%が「コロナ禍以前の水準よりもさらに多くする」「コロナ禍以前の水準に戻す」と回答。ワクチン接種が進んでいる人ほど消費活動を再開したいという割合が高くなっている。
一方、外食については「コロナ禍以前の水準よりもさらに多くする」「コロナ禍以前の水準に戻す」の合計が43%で、「今(コロナ禍)と変わらないままにする」と回答した人も同程度いた。そのほか、劇場でのコンサート・演劇の鑑賞、映画館での映画鑑賞、競技場でのスポーツ観戦、カラオケなどの活動でも、支出意向は外食と同程度に留まっている。
また、どの活動についても「コロナ禍以前の水準よりもさらに多くする」と回答したのは、1割未満だった。抑制されていた消費活動が爆発することによるリベンジ消費が期待されているが、その効果が表れるのは限定的となりそうだ。
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飲食店ではコロナ禍で高まった中食需要の開拓を
「リベンジ消費」が大きく期待できない背景には、生活者のどのような心理があるのだろうか。コロナ収束後における生活全体の状況について調査すると、「コロナ禍前の生活に戻る」と回答した人は25%だったのに対し、「ある程度はコロナ禍前の生活に戻るが、完全には戻らない」と回答した人は59%、「コロナ禍と同じ生活を送り続ける」と回答した人は16%という結果になった。
コロナ禍以前の生活に完全には戻らないと答えた人にその理由を聞いたところ、コロナが完全に収束するとは思えないとする人が41.1%。コロナ禍がきっかけでデジタル化が進み、そうした生活様式に慣れてしまったためだとする人は18.4%で、「外食に頼らなくても自宅で料理を楽しめることが分かったし、オンラインで注文すれば便利に買い物できることも知ったので」(50代)などという意見が見られた。以前はネットサービスをあまり使っていなかった世代が、コロナ禍をきっかけに使い始めてその利便性を実感しているようだ。
コロナ禍で強制された行動変容によって生活者の意識や価値観は変化しており、これまでのビジネスモデルによる「リベンジ消費」を期待するのは難しい。飲食店では、コロナ禍をきっかけに高まった中食需要に応えるようなテイクアウト・デリバリーを拡充するなど、ニューノーマルなサービスを開拓していく必要がありそうだ。