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竹田クニ氏が語る外食業界の未来。ポストコロナに向け「新しい産業モデル」へ進化を

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20世紀の成功体験から脱し、新たな「産業モデル」へ進化する

こうした大きな3重構造の変化によって、外食産業は「産業モデル」のレベルで変わる必要があるのではないか?と考えます。ここで言う「産業モデル」とは何か?

■20世紀型のサービス産業モデル
外食産業が1970年代に生まれ、大きく発展を遂げた20世紀(1970年代から1990年代にかけて)、日本の外食産業は「人口増加」「経済成長」「潤沢で安価な労働力」という条件下で発展してきました。
※1992年前後以降からはバブル崩壊によって低成長時代に入るが、外食産業全体の市場規模は1997年がピークである

躍進するチェーンは、合理的な経営で店舗数をスピーディに拡大し、業容を拡大。「文鎮型」の組織は、それが求めるスピードに適合していた。

20世紀型サービス産業モデルの概要

労働市場は潤沢で「辞めても代替が効く(働く人が採用できる)」がゆえに、労働集約的な仕事を人が担うことにイノベーションが起きず、また現場人材への教育投資が低位になりがちで、昇進・昇格というステージが上がる際に「キャリアスタック」(スキルが不備で成長が止まること)や、それが故の退職など離脱も多かった。現在の経営環境と比べてどうでしょうか?

現在の経営環境は「経済成長はマイナス」「人口減少」「労働人口減少」「人件費高騰」……20世紀の環境とは真逆と言えるのです。そしてコロナ禍、さらにウクライナ危機によって原材料費、エネルギーコストは上昇し、世界経済レベルでの混乱は出口が見えない。

こうした中、外食産業は20世紀の成功体験から脱し、現在の環境に適応した「新たな産業モデル」に生まれ変わらねばならないと考えます。

「新・サービス外食産業モデル」とは?

外食産業は、テクノロジー活用によって「人」が生み出す価値と対価、従業員として多様な「人」が生き生きと輝ける産業モデルに進化していくことが求められると考えています。

■「新・サービス産業モデル」のポイント
顧客価値向上→対価性向上…顧客の体験価値、サービスの対価をいただく
従業員の体験価値向上→理念・ビジョンへの共感、多様な働き方の共存、自己成長感・自己効力感
労働集約的な業務をテクノロジーで効率化する→DX(デジタルトランスフォーメーション)

新・サービス産業モデルの概要

現在、外食産業で進みつつあるテクノロジー活用も、それが省力化・省人化という目的のみになるのではなく、それによって「顧客が享受する価値=CX(顧客体験価値)」「働く従業員が享受する価値=EX(従業員体験価値)」がともに実現、向上することが重要と考えています。そして価値の対価性が向上することよって収益性、生産性が向上し、労働分配率が上がる……こうした産業を目指していくことが必要ではないでしょうか?

「新・サービス産業モデル」を目指す手段としてのテクノロジー活用≒DXの考え方

労働集約的な仕事を、「安価で豊富で代替可能な人の労働力」に依存してきた「20世紀の産業モデル」は継続がもはや難しい。DXはこれからの外食産業にとって重要なキーワードであることは間違いありませんが、20世紀モデルに対する、対処療法的、部分最適的にテクノロジーを活用するだけでは不十分と言えるでしょう。

例えば、ホール業務が「人手不足」だからと言って、オーダーテイク(注文取り)や配膳業務をロボットに置き換えるだけでは、短期的にオペレーションは回ったとしても、顧客満足が下がったり、従業員の接客意識が低下するなどのデメリットが生じるケースがあります。

■店の価値のありかによって選択するテクノロジーは変わる
ある焼肉店での実例ですが、セルフオーダー導入でホールの配置人数を減員することはできたのですが、一方で「おすすめ力」の低下で客単価が下がったほか、スタッフのお客様への意識が下がり、その結果、顧客満足度も下がった……という事例も存在します。

こうした例から学ぶべきは「店の“価値のありか“によって選択するテクノロジーは変わるということ。労働集約的な仕事をテクノロジーで代替した分、「人でこそやるべき仕事は何か?」「それによって顧客、従業員にとってどんな価値向上=“良いこと”が実現できるのか?」という課題、目的の設定が極めて大切なのだと思います。料理提供スピードや注文・会計の利便性が価値になる店は、セルフ/スマホオーダー、キャッシュレス、セルフレジ導入は効果的でしょう。

DXはCX(顧客体験価値)、EX(従業員体験価値)を高めるための「手段」

一方で、丁寧な接客、メニュー説明・リコメンドが重要な店は、人がその業務に集中できるように、配膳・下膳業務は配膳ロボットに任せることで接客時間を増やす、といった考え方が重要のなるかと思います。

また、労働人口が減少する中、短時間労働やスポット勤務、外国人労働者など、多様な労働力の混成によるチーム編成が求められています。多様な働き方や価値観に対応した、処遇・報奨制度や教育制度を設けることは「新・サービス産業モデル」において重要な課題となります。

■バックヤードのデジタル化は時代の要請
一方で、予約管理、シフト管理、経営データ分析、発注・棚卸といったバックヤード業務は、デジタル化を急ぐべきと思います。

バックヤードの業務は顧客価値にスグには直結しない一方で、従業員の満足度、体験価値には直結します。テクノロジーで解決できるバックヤード業務はできる限りテクノロジーで省力化し、ホールスタッフで言えば接客、料理人で言えば調理といった業務に集中できる環境を作ること。それが、「新・サービス産業モデル」においても大切な取り組みとなります。

外食産業は歴史的な大きな転換期=進化の時期

感染症による世界的な混乱に加え、戦争、そして円安……外食産業を取り巻く環境はあまりに厳しい。一方で、ここで生まれる改革、イノベーション、人々の知恵と工夫は、必ずこの業界を進化させ「新・サービス産業モデル」を生み出すことができると信じています。

そのために重要なのは、「アジェンダ・セッティング」。アジェンダという言葉には、“議題”という意味のほかに、“成し遂げるべき課題”という意味があります。

この危機を乗り越えるためには、今現場で起きている人出不足やコスト高騰 etc.への対応は緊急で必要です。その努力の先に、顧客、従業員の体験価値(CX、EX)の向上、対価性の向上、生産性の向上といった「アジェンダ」を設定することが必要であり、そのために、官民、そして飲食店にかかわる全ての産業の総力を挙げて、21世紀の基幹産業としての「新しい外食産業のモデル」を創っていきたい、そう考えています。

「新しい外食産業のモデルを創っていきたい」と語る竹田クニ氏

竹田クニ
1963年生まれ。「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリスト、株式会社ケイノーツ代表取締役、日本フードサービス学会会員、一般社団法人 日本フードビジネスコンサルタント協会 専務理事、早稲田大学校友会 料飲稲門会 常任理事。マーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに講演、記事執筆、企業のコンサルティングを行うほか、外食、中食、給食を結ぶB to Bマッチングも手掛けている。

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