竹田クニ氏が語る外食業界の未来。ポストコロナに向け「新しい産業モデル」へ進化を
2022年春、飲食店に要請されていたさまざまな営業制限は一旦解除され、外食市場の規模は回復に向かっていたが、再び感染者数が増加する中、先行きが不安な状況が続いている。
現在、飲食店に求められる対応とは何なのか? 外食業界全体の未来はどのように変化していくのか? 多様な視点からフードビジネスの未来を提言する竹田クニ氏に語っていただいた。
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「イートイン7割市場」はアフターコロナでも継続
コロナ禍前(2019年4月)と比較し、今年4月の時点で外食市場の規模(首都圏・関西圏・東海圏)は71.8%まで回復しました。これは多くの有識者、経営者が予想していた「7割市場」が現実化したものでしょう。新型コロナウイルスの感染リスクを極力回避しながら生活を続けるのであれば、今後も市場規模は現状維持が続くと考えるのが妥当と言えるでしょう。
4月に続く5月の調査では、コロナ禍前比80.5%とさらに回復を見せていますが、この数値については、これまで抑えてきた消費が反動的に増加する“反動消費(リベンジ消費)”の性質を含んでいると思われ、8割の回復は一時的・限定的な可能性があるのではと考えています。
7月に入ってからの感染再拡大によって再び飲食店への客足は鈍ってきていますが、こうした感染者の増減が続く状況の中では、イートインについては基本的に「7割市場」が継続すると予想しています。
イートイン市場が「7割市場」になるという予測の理由は、コロナ禍を通じた消費者の「食」の意識と行動の変化にあります。2年に及ぶコロナ禍の中で、人々の働き方や生活が変化し、デリバリーやテイクアウト、通販など多様な「食の摂り方」が変化・多様化しました。また、企業が宴会・接待を自粛し、従業員に対しても外食機会や人数を制限するなど、仕事や仕事帰りの飲酒・食事機会の持ち方に変化が表れています。
外食・中食・内食の垣根が低くなり、様々な食の形態が現れたことは数年前より顕著でありましたが、こうしたボーダレス化が進んだことにより、「食の市場」全体の中で、相対的にイートイン市場のシェアが下がった可能性が高いと考えられます。
“提供態”の多様化という戦略
飲食店の業績は「客数を上げるか」「客単価を上げるか」によって変わるわけですが、イートインが7割の市場においては、もう一つの要素として「店舗外で売る」が重要になってきます。業態によって向き不向きはあるものの、デリバリーやテイクアウト、通販などで商品を販売することによって業績を担保することは、「イートイン7割市場」においてはより積極的な取り組みが有効となるでしょう。
コロナ禍ではデリバリー、テイクアウト、通販の市場は消費者への定着が進んだと考えられ、この市場は一気に成長し多様化しました。進化した市場の中では、単に「店のメニューを弁当にする」「テイクアウトできます!」といった取り組みでは十分とは言えず、競争の中で「選ばれる・評価される商品は何か?」という、積極的かつ戦略的な取り組みをすることが重要と言えるでしょう。
会社宴会の市場が大きく変化
特に変化が大きいと考えられるのが「会社宴会」市場です。コロナ禍では、多くの企業(学校、団体なども含む)が「行事」として行う宴会、接待の自粛を従業員に要請し、さらにはプライベートの昼食や会社帰りの外食も極力自粛するよう求めた企業も少なくありませんでした。こうした状況は、従来から徐々に進んできていた「企業とアルコールの関係性の変化」を加速させ、結果、コロナ禍以降の市場においては、企業宴会・接待需要は減少すると考えられます。
「働き方・就労環境の変化」「酒を通じたコミュニケーションのあり方」「労務的な課題」「リスク観点」といった観点で、企業が行事として行う“宴会”や“接待”について、必要性を疑問視する声は年々高まっていました。コロナ禍により必然的に機会が減少し、こうした考え方はさらに進むのでは?と考えられます。
したがって、会社宴会・接待をターゲットとした飲酒業態、特に大型の会社宴会に集客依存度が高い大箱居酒屋などは、今後これまでとは違った戦略で戦うことが重要となるでしょう。すでに市場では、飲酒業態から食事業態への転換をはじめ、少人数・プライベートシーンに対応したコースメニュー、飲み放題プランの見直しなど、飲食店の対応も進んできています。