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99円寿司と499円ワインで三軒茶屋を席巻中! 『サンチャモニカ』の次なる一手

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『寿司とワイン サンチャモニカ』オーナーの綱嶋恭介氏

2019年12月にオープンした経堂の『酒ワイン食堂 今日どう?』の成功を受け、2021年6月22日には三軒茶屋にお寿司とワインをポップに楽しめる『寿司とワイン サンチャモニカ』を開業。今年8月10日には『寿司とワイン サンチャモニカ』の系譜を継ぐ『寿司とワイン サンフランスシコ』と『ALISO』を学芸大学駅そばに出店した。

これらの店舗を手がけるのが、『塚田農場』などを展開するエー・ピーカンパニーで執行役員を務めていた綱嶋恭介氏だ。コロナ禍で新たに2店舗を出店するなど、成功を収める綱嶋氏に繁盛店の作り方を聞いた。

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三軒茶屋の市場調査を行い、バッティングしない業態として「寿司×ワイン」に行き着く

現在、15坪30席で月間400万~450万円(坪月商26〜30万円)を売り上げる『酒ワイン食堂 今日どう?』。その人気ぶりから「他のエリアにも出店してよ」という声もあり、同じ世田谷区内にある三軒茶屋に目を付けた。しかし居酒屋激戦区である三軒茶屋では『酒ワイン食堂 今日どう?』は埋もれてしまうと感じた綱嶋氏はどのような業態にすべきか思案する。

「三軒茶屋にはすでにおしゃれな居酒屋は多いし、我々の強みであるワイン特化型店だと『ウグイス』さんがいるし、日本酒だと『赤鬼』さんなど老舗がいらっしゃる。焼鳥も『床島』さん『月山』さんという人気店があるし、入居するビル内でもバッティングしないような業態を考えたときに行き着いたのが、気軽に食べて飲めるお寿司屋さんでした。三軒茶屋にはビブグルマンを取っているような高級なお寿司屋さんと、リーズナブルな大衆寿司屋はある一方、客単価5,000円程度のお寿司屋さんがなかったんです」

特にワインとお寿司が楽しめるお店はなかった。そこから都内や鎌倉、小田原などベンチマークしていた寿司ビストロなどをリサーチし、繁盛ぶりなどから「この方向性で間違ってなかった」と確信し、コンセプトを「寿司とワインのカジュアルな酒場」に定める。

27坪45席の店内は、カウンター席のほか、テーブル席、個室を完備。寿司屋のカウンターというと一般的には木製であることが多いが、「ポップさを表現できる」と居抜きを生かし大理石のカウンターをカットし再利用した。内装は前職時代からお世話になっていて、『酒ワイン食堂 今日どう?』や『寿司とワイン サンフランスシコ』の内装も担当したデザイナーが担当。ロゴデザインにも店舗のコンセプトである「ワインと寿司をポップに」を反映し、店頭やグラス、壁面にあしらった。

ラーメン店の居抜きを生かしつつ、ポップでカジュアルな内装に仕立てた

にぎり99円〜、アルコール499円〜ながら原価率は33%程度をキープ

物件の紹介を2021年1月に受け2月には内見、3月には「GEMS三軒茶屋」の地下1階を契約し、4月以降はメニュー開発のため高級寿司からチェーン展開する回転寿司までをリサーチした綱嶋氏。シャリのグラムや、ネタとワインのペアリングなども精査した。

『寿司とワイン サンチャモニカ』のメインコースは5,000円の「究極コース」と、要予約でリピーター向けの「裏究極コース」6,000円がある。料理は99円〜のにぎりに299円〜のあて巻き、『酒ワイン食堂 今日どう?』の人気料理を寿司が進むよう10%ほど小さいポーションにして価格を抑えた一品料理、酒のお供、魚料理などを199〜799円程度でラインナップした。

「前職時代に、美味しいのに売れないメニューがあって。何でだろうって考えたときに、メニュー名が原因だと気づいたんです。どんな料理なのかイメージが湧かなかったり、知らない料理名だと自ずと注文されない。ネーミングで注文率が変わると思っています」とメニュー名にも綱嶋氏の手腕が光る。

例えばシャリの上に本まぐろの漬け赤身、炙りの中トロと大トロをのせたネタは「まぐろ三重奏」。船上凍結したぼたん海老を使ったにぎりには、ぼたん海老の殻を頭ごと揚げた素揚げを添えて「ぼたん海老と大人のかっぱえびせん」という、興味をそそりつつ、料理もイメージしやすい名前にしている。

コースで提供される「ぼたん海老と大人のかっぱえびせん」や「まぐろ三重奏」、「すみいか」に「水ダコとクレソンの バルサミコ和え」「京丹波ポークの角煮」。前菜にはギリシャの固有品種を使った自然派の白ワイン「SANT’OR」、まぐろにはマスカット・ベリーAを使った「ルージュ・クサカベンヌ2020」をペアリング

お酒の提供の仕方については、『酒ワイン食堂 今日どう?』の反省を生かしたと言う。

「ワインや日本酒を飲みたいけど、何を飲んでいいかわからないし、注文して失敗したことがあるという人がとても多く、ペアリングの需要が高いことを感じていました。ただ、『酒ワイン食堂 今日どう?』ではペアリングを提案できるのが、僕と店長しかおらず、忙しい時はお客様一人ひとりに料理に合うワインや日本酒をペアリングすることが難しい場合がありました。そのため今回はコースそれぞれの料理に合わせたペアリングリストを作成。ワインに欠品が出た時の対応が面倒ではありますが、お客さんもわかりやすいし、オペレーションの負荷も軽減できました」と新たな取り組みが功を奏したと明かす。ペアリングリストについては、ソムリエの資格を持つ綱嶋氏と、酒ディプロマの資格を持つスタッフが作成した。

アルコールはワインが599〜999円で、レギュラーのグラスワインがスパークリングと赤・白・オレンジ含め9種類ほどに加え、日替わりのワインが3種類とボトルが約50種類。産地を問わず、ルーマニアやギリシャ、日本産まで幅広く、ナチュールも多く揃う。ナチュールも人気のため、大手だけでなく中小の酒屋やインポーターからも仕入れている。日本酒は499〜749円でフルーティー系、辛口系、うま味・熟成系含め7種類だ。

ワインや日本酒は『酒ワイン食堂 今日どう?』と同様、ビールよりも安価にし「飲んでも損はしなかった」と思わせる価格に設定。とはいえビールなどの注文とならすとドリンクの原価率は約29%に抑えられている。フードの原価率は、仕入れ値の変動が大きい魚介を使っているため約38%と少々高め。フードとドリンクを合わせたトータルの原価率は33%程度だという。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。