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渋谷最古の回転寿司『すし台所家』がカムバック。「寿司居酒屋」として新時代に挑む

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『すし居酒屋台所家 渋谷本店』を運営する株式会社燦代表取締役の玉山理氣氏

1979年、渋谷で初めての回転寿司店として創業した『すし台所家』。41年の間、渋谷の街で愛され続けてきたが、2020年5月にコロナ禍の影響で閉店を余儀なくされた。

しかし、復活を願う声も根強く、2021年11月に実施したクラウドファンディングで目標金額を上回る約112万円の支援金を集めプロジェクトに成功。2022年12月9日に『すし居酒屋台所家 渋谷本店』として復活した。老舗の閉店、そこからクラファンを経て復活したその内幕に迫る。

のべ1,000万人を集客した「活気ある渋谷の寿司屋」がコロナ禍で嫌厭され閉店

お客の声を反映した豊富な商品ラインナップが評判を呼び、創業から41年でのべ1,000万人以上が来店した『すし台所家』。人気ドラマ『孤独のグルメ』の舞台として三軒茶屋店が登場するなどメディアにもしばしば取り上げられ、多くの著名人が訪れたほか、海外旅行客から旅の目的地としても愛されてきた。

行列ができる人気寿司店に転機が訪れたのは、2020年のパンデミック。2020年1月から2月にかけて日本にも新型コロナの感染者が出始めると、徐々に客足が減っていったという。

3月になると「非接触」「飛沫防止」がキーワードとなり「とにかく人とマスクなしで話をするなといった雰囲気になっていった」と話すのは玉山理氣氏。創業者である両親から店を受け継ぎ、株式会社燦の代表取締役として『すし台所家』を牽引してきた人物だ。

「素手で生ものを握って提供する料理で、板前が元気に声出しをする寿司屋はコロナ禍における悪条件が揃っていました。『渋谷に行けば感染する』という雰囲気が強まり、ランチの主要顧客であったビジネスマンの多くがリモートワークにシフトしたことで売上は激減。ディナーや深夜営業の主要顧客であったクラブ帰りの人や、飲食業界関係者も営業時間短縮や休業、閉店の影響で客足が途絶えてしまって、売上が約90%も減りました」と大きな打撃を受けた当時を振り返る。

1階カウンター席。以前はランチ時に7回転しており、500円の丼ぶりを200食売っていた

昼、夜、深夜と営業時間も長かったため、抱えている従業員も多かった。「安くうまい」をコンセプトに掲げる薄利多売の商売だったため、大幅な売上減少で従業員に給料を支払うのも困難になることが予想された。

さらに2020年4月の緊急事態宣言発令時点では、飲食店事業者に対する給付金支給の話もまだ検討中の段階だった。世の中的にも未知のウイルスに対する恐怖心が強く「従業員を危険に晒すリスクもあり不安を感じていました」という玉山氏。話し合いを行い、ゴールデンウィーク後に数日間だけ営業し2020年5月20日に閉店することを決断した。

コロナ禍で寿司屋という業態の厳しさを実感したほか、閉店時に回転寿司の機材を処分しており、寿司を握る職人も育成できていなかったため、玉山氏は再び寿司屋をするつもりはなかったという。しかし親から受け継いだこの場所をそのまま放置するのも忍びなく、さまざまなご縁や出会いがあり、新鮮な海鮮料理を味わえる『居酒屋台所家 渋谷道玄坂店』として2022年3月9日に再出発を果たした。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。