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渋谷最古の回転寿司『すし台所家』がカムバック。「寿司居酒屋」として新時代に挑む

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地下のテーブル席。ソファ席もあり広々としている

やっぱり寿司を提供したい。きっかけはファンの声

オープンを喜ぶ客も多かったが、玉山氏は多くのお客からかけられるある言葉に引っかかっていた。「寿司はないの?」という声だ。次第に寿司を復活させることを考え始めた。契機となったのは「クラウドファンディングに挑戦してみたら」というファンからの声だった。

「やるからには前と同じ失敗はできないと思いつつ、どれくらいの方が台所家の寿司を食べたいと思ってくださっているのか、クラウドファンディングであればそういったお客様の声も合わせて聞くことができると思いました」と当時を振り返る。

結果、クラウドファンディングは目標金額の100万円を達成し、3週間のプロジェクト期間で総勢96人、総額約112万円の支援金を集めた。支援者から寄せられた「寿司を復活してほしい」という応援の声が後押しとなり、2022年12月9日に『すし居酒屋台所家 渋谷本店』として復活を果たした。従業員は『居酒屋台所家 渋谷道玄坂店』時代のスタッフ数人を採用し、三軒茶屋店の板前に異動してもらい人材を揃えた。

奥から時計回りで「炙り三種にぎり」550円、「まぐろ三種にぎり」440円、「こぼれ三種にぎり」660円

本鮪のトロが2貫350円と格安な値付けながら、
メニューのコンパクト化やシャリマシーン導入でコストを削減

復活した『すし居酒屋台所家 渋谷本店』では「安くてうまい」という台所家スピリットはそのままに、原価率の高い寿司を1ネタ2貫から提供する。居酒屋ということで、つまみとしても食べられるようシャリの量は少なめ。今回、寿司職人を雇うのが難しかったため、板前が魚を捌きシャリマシーンを使いつつ寿司を提供するなど、オペレーションの変更も図った。

「以前は料理の数が本当に多く、従業員に仕込みの負担が大きくのしかかっていました。そこで今回は商品のラインナップを厳選することで、スタッフの負担も減らしています。扱うものが生ものなので日持ちしないため、商品ラインナップが多いとロスも多く出てしまいますが、内容を絞ったことで結果的にロスも少なくなりました」とコスト削減も叶ったと話す。

とはいえ、ほかの居酒屋と比べれば十分なメニュー数だ。来るたびに真新しさを感じてもらえるよう、季節限定商品も取り入れている。

二人でも十分なボリューム感を誇る「牛タン肉じゃが」759円と「ぶり大根」539円

人気は豊洲市場から仕入れる本鮪を使った「はみ出るとろたく巻」(一本440円)や、食べ比べ三種にぎりシリーズ。以前の店舗で人気だった「ぶり大根」も食べやすい切り身にするなどリニューアルし、いまも評判となっている。また、系列店に焼肉店があり、そこで端材となる牛タンを使った「牛タン肉じゃが」など新メニューも揃う。

5種類のお茶粉を金宮焼酎の水割り、お湯割り、ソーダ割りで味わえる「お茶割り飲み放題」。湯呑みは『すし台所家』で使っていたもの

驚くのがドリンクの値付けだ。なんと以前の店舗よりも値下げしているのだ。

「居酒屋ということで今回メインはお酒。そのため以前生ビールは550円〜、サワー440円〜でしたが、この店ではビール539円〜、サワー319円〜に値下げしています」

さらに新たな取り組みである「お茶割り飲み放題」はなんと60分605円という驚異的な値付けだ。焼酎サーバーから焼酎を注ぎ、お茶も焼酎もお好みの濃さや割り方で楽しめるという、エンターテイメント要素もウケている。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。