マグロブームの先駆者『マグロスタンダード』が月商600万円を突破。トレンドから「ブランド」へ
働き手に選ばれる企業を目指す。経営者としての理想は、まさかのあの人
慢性的に人手不足の飲食業界。だが、同店においてその心配はなく、社員・アルバイトともに、リファラル採用で充足している。特にインセンティブも設けていないというから、本当に働きやすい職場なのだろう。飲食業界の労働環境に関して、宮﨑氏は業界特有の利益構造を指摘する。
「飲食店で働くイメージって、『労働時間が長い・休みがない・給料が少ない』の三重苦が当たり前。これでは働きたくないですよね。ではなぜ従業員に負担を強いてしまうのか。その主な原因は、売上の10%しか残らない飲食業の利益構造です。利益が少ないから、従業員にたくさん働いてもらわないといけないし、少ない給料しか渡せません。だから当社では、原価率25%を目指し、会社の利益を上げて、社員やアルバイトにどんどん還元したい。飲食業で週休3日を実現させたいと思っています」
さらに従業員のキャリアプランにも、新たな選択肢をつくりたいと語る。
「飲食店で働いていると、その先は独立するか、経営幹部になるか、多くはこの2つの選択肢しかありません。でもこの道だけが正解とは思えないし、正直リスクも高い。だったら今いる会社でそれぞれの強みが生かせるポジションを創出して、一緒に会社を盛り上げたい」
たとえば先日宮﨑氏が請け負ったプロデュース案件では、料理が得意な従業員にレシピづくりを依頼。クライアントからの依頼料の半額を支払った。
「これなら通常業務以外の部分で売上を上げながら、同時に従業員の給与を増やせる。このように、私は経営者としてキャッシュポイントを増やしていくから、社員にはそれに対応できる専門性やスキルを高めてね、と話しています」
関わる人それぞれが強みを持ち寄って助け合う組織づくりは、あの有名漫画の主人公を彷彿とさせる。
「経営者として憧れているのは、漫画『ONE PIECE』のルフィーです。私は抜け漏れも激しいし料理もできないし、飲食店経営者としてはポンコツだと思います。でも、だからみんなの力を頼りにしているし、それを集結させることで強い組織をつくりたい。ルフィーはまさに、私が目指す新時代のリーダー像ですね」
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2号店オープン、FC展開、セントラルキッチン、物販…躍進が止まらない
大好評の同店だが、4月には2号店となる『マグロスタンダード 錦糸町本店』がオープンする。あらゆる食べ方ができるマグロだから、あなたの「スタンダード」を見つけてほしい、という思いを込めた店名。2号店では、30種類以上の「まぐろ寿司」を名物料理に掲げる。
「一周回って寿司に帰ってきました(笑)。マグロ焼肉がトレンドからブランドになれるのか、1号店での実証検証は続けつつ、2号店では軌道修正しさらに勝率を上げたいと考えています」
マグロ焼肉は、新しい業態をつくる0 to 1戦略と、隙間を狙うニッチ戦略、このふたつの戦略の掛け合わせだが、実はこれだと勝率は7〜10%しかないとされている。また当初想定していた、焼肉マーケットに入ることは叶わなそうだと課題視する。
「焼肉を食べたい人は、やっぱり牛の焼肉を食べに行きますから。マーケットニーズに、マグロ焼肉が食い込むのは難しそうです」
そこで2号店では、マーケットミックスという戦略を掛け算し、寿司を取り入れることで勝率をあげようと考えた。こうして利益が見込める仕組みをつくり、2年後に予定しているFC展開や、海外展開、セントラルキッチン化に向けた準備が着々と進んでいる。さらに武蔵小杉に小売の鮮魚店をオープンさせるなど、サービス業に留まらない挑戦が続く。
最後に宮﨑氏に、飲食店経営のヒントを聞いた。
「やっぱりまずは、取引先と密にコミュニケーションを取ることです。知らないうちに、価値あるものが捨てられているかもしれませんから」
経営に関する豊富な知識と、周りの人を巻き込む行動力で、次々に新たな価値を生み出す宮﨑氏。その力強いリーダーシップに、飲食業界の明るい未来を見た。
『マグロスタンダード』
住所/東京都江東区富岡1-25-4 ニックハイム八幡103
電話番号/050-5385-4762
営業時間/月〜木16:00〜24:00、金16:00〜27:00、土15:00〜27:00、日15:00〜23:00
定休日/なし
坪・席数/21坪・42席
https://maguro-standard.com