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リニューアルした憩いの角打ち酒屋『イワタヤスタンド』。売上は赤字続きだった過去の3倍に

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「イワタヤボウル」300円と「もつ煮込み」「ポテトサラダ」「イワタ焼き」など舞さん手作りの料理はどれも一皿400円で、15時から販売

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長く続けていくために大事なのは、売上よりも地域との絆

『イワタヤスタンド』では、仮店舗時代から「混雑時は譲り合い」「自分で後片付け」などのルールが受け継がれている。謙一さん曰く、これらは自然と生まれたものだそう。

「仮店舗が狭かったので、みんな自然に譲り合っていました。リニューアル後も店のスタンスを伝える意味で、POPにしてルールを掲示しています。譲り合い、助け合いをするときって『ここ使っても大丈夫ですか?』というように、必ず人と人とのつながりが生まれますよね。角打ちを始めた理由も、お客様同士のコミュニケーションを増やしたかったからなので」(謙一さん)

また、店では駄菓子も売っており、子どもがたくさん訪れる。寄り合いのように、皆で子どもたちを見守りながら酒を酌み交わす、昭和のような風景がこの店には広がる。

「元々いろいろな人が来てくれるお店を目指していたので、大人に酒を売るのは手段の一つに過ぎません。目標は地域を変えていくこと。相談員時代、どうにかしたいと感じていたのが、ひとりぼっちで藁にもすがれない人たちの存在でした。もっと地域や街がセーフティネットとして機能すれば、孤独な人は生まれません。酒屋が繁盛するのも嬉しいですが、大儲けしたいとは考えていなくて。私たちは、街のセーフティネットになりたい。街に住む、お店に関わる人たちが楽しめる、ワクワクする場所でありたいと思っています」

陽光差し込む、明るい店内

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今後は軒先で地元飲食店のケータリングやお弁当販売サービス、酒蔵を呼んだ試飲会、酒蔵をめぐるバスツアーなどを企画しているという岩田夫妻。さらに、引きこもりの子どもを持つ親たちが悩みを共有できる会合など、夫婦ともに社会福祉士であることを活かした活動も行っていきたいと話す。

「利益にならないけれど、人が介在する喜びってありますよね。金銭が発生しない喜びは生きていく上で必要なエネルギーになります。経営者としてはそろばんを弾くことも必要ですが、儲けるだけだと疲れてしまいますし、長く商いをするためにはやはり我々だからこそできることに取り組んでいきたいと思っています」

社会福祉士から酒屋の商売人への転身というと、かなりのキャリアチェンジにも思えるが、岩田夫妻の軸はまったくブレていない。酒を売ることが目的なのではなく、酒屋、角打ちという場を通じて、地域の人たちがつながるきっかけを作り、孤独な人を作らないようにしている。それは、岩田夫妻が社会福祉士の頃に目指していた世界そのものだ。対人コミュニケーションの大切さが見つめ直されているいま、こういった店が繁盛するのは自然の成り行きだろう。

『イワタヤスタンド』
住所/東京都墨田区東向島4-43−6 エスカノイエ東向島
電話番号/03-3611-6917
営業時間/11:00〜20:00(日・祝12:00〜18:00)
定休日/月曜
https://www.instagram.com/sake_iwataya/

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。