月100万円の赤字から一転、TikTokで売上4倍に。『PLUCK AND PLANT』のSNS活用術
今や飲食店におけるマーケティングツールとして欠かせないSNS。事実、オープン以来赤字続きだった池尻大橋のビストロ『PLUCK AND PLANT(プラックアンドプラント)』は、TikTokで店の改善策を募り、実行とフィードバックを続けたことでわずか1か月半で黒字転換に成功した。さらに翌月には、売上はアカウント開設前の4倍、来客数は7倍、予約数は13倍に。そのサクセスストーリーの裏側に迫る。
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無休・無給・赤字で閉店目前だった『PLUCK AND PLANT』
「僕は、大赤字ビストロ店長」
SNSを利用する人であれば、そんな見出しとともに、長髪にニット帽、タトゥー姿で登場する“kj氏”の動画を目にしたことがあるかもしれない。
彼は、池尻大橋のビストロ『PLUCK AND PLANT』の店長。過日発表された「TikTok上半期トレンド大賞2023」でグルメ部門の部門賞を受賞した同店は今、若者たちの間で最も話題の飲食店といっても過言ではないだろう。しかし、この店は今年2月まで、赤字続きの文字通り「大赤字ビストロ」だった。
そもそも『PLUCK AND PLANT』は2022年10月、共同経営者である人気ドライフラワーアーティスト・miya氏のショップを併設したカフェビストロとしてオープン。miya氏が手がける美しいフラワーアートであふれる店内と、人気ベーカリー『TOLO PAN Tokyo』のパンを使用したオリジナルオープンサンドを軸に、やや高価格帯でのカフェ展開を想定していたという。
店があるのは、池尻大橋駅から徒歩3分、国道246号線沿いのビル内だ。一見、好立地にも思える場所だったが、開業から4か月、常に赤字が続いていた。
「駅前とはいえ地下であることが響いて、想定以上に客入りは厳しかったです。加えて周辺の飲食店はかなり低価格設定。もちろんすぐに価格やメニューを見直しましたが、それに伴って客単価も下がった。当時の売上は毎月50〜60万円ほど。利益が出るはずもなく、僕もmiyaもずっと無休で無給でした(笑)」(kj氏)
決して集客策を打っていなかったわけではない。特にSNSでのプロモーションはオープン当初から重視し、約60万円の予算をかけてインフルエンサーによるPRにも取り組んだという。しかし、その多くが利益率の低いランチタイムの来店だった上に夜の来店につながらず、効果は得られなかった。
