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月100万円の赤字から一転、TikTokで売上4倍に。『PLUCK AND PLANT』のSNS活用術

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kj氏を育てる“育成ゲーム”感覚がファン獲得の鍵に

2月に投稿した動画は計3本、売上は微増の70万円。だが確かな可能性を感じたふたりは思い切って利益率の低いランチ営業を止め、日中を動画の撮影時間に当てながら週に3本のペースで投稿し続けたという。内装やメニューのビジュアル、キャンペーン企画案など、正直に今、自分たちが悩んでいることを自分たちの言葉で投げかけ、できるだけコメントを促すよう工夫。その声を次々と取り入れては改善し、また動画にしてフィードバックする……。

合わせて、動画と連動した無料キャンペーンや、クーポンや特典を盛り込んだLINEの「お得意様カード」を展開することで、動画を見た人・コメントを寄せた人々が店を訪れ、3月には売上115万円で初めて黒字化を達成。さらに4月には274万円と、TikTokを開設した2月から4倍にまで売上を伸ばすことに成功したのだ。

名物の「5種の木の子のクリームリゾット」はユーザーの声を元に2度ビジュアルを改良

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だが、なぜこれほどまでにkj氏の動画は大きな反響を生み、TikTokユーザーたちは彼に声を届け続けるのか……。

実は同店では、実行した施策の結果はもちろん、こうした月次の売上数字もユーザーに公開してきた。ユーザー側からすれば、「kj氏を応援したい」という気持ちに加え、「自分が提案した改善策をkj氏が実行してくれた」喜び、さらにはその結果「店がどう変化したのか」「kj氏はよりよい店長への道を歩めているのか」を知ることで、物語の一部を自分がつくっているような感覚を味わっているのだろう。

いい結果が出ればともに喜び、悪ければまた一緒になって改善策を考える。いわば“リアル育成ゲーム”をプレイしているような体験が、ファン獲得につながったといえそうだ。

まさにイミ消費時代。店に行く“意味付け”が成功の分かれ道

今、店にはkj氏に会いに来る客が絶えない。

「僕は本当に料理が好きなので、多くの方に『美味しい』と食べてもらえることが素直に嬉しい。動画で人気だった料理をお得に提供したり、レシピを公開してこだわりを伝えたりして、スマホ上のやり取りから実際の来店を促すきっかけづくりも意識的に行っています」とkj氏。

miya氏も「来てくださったお客様とはできるだけコミュニケーションをとるようにしている」と続けた。

「リピートする理由の一つは、“そこに思い出がある”こと。kjと話せたとか、自分が提案した料理が提供されていたという喜びがあれば、また来たい、誰かを連れて来たいと思ってもらえるはずですから」

料理はすべて本格派。ソースやドレッシングまで自家製

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TikTokの特性をつかみ、ユーザーを巻き込むことでファン獲得と黒字化に成功した『PLUCK AND PLANT』。だが彼らは最後に「結局は、自分で自分を知ってもらう努力をどこまでするかが大事だと学んだ」と語った。動画に限らず、周辺の飲食店に通って街の人や常連客と親しくなるもよし、文字ベースのSNSで密なコミュニケーションをとるのも手。とにもかくにも、消費者に店の人となりを知ってもらうことが、イミ消費時代の集客の鍵になりそうだ。

『PLUCK AND PLANT』
住所/東京都世田谷区池尻3-4-5 大江ビルB1F
電話番号/03-5432-9817
営業時間/平日17:00~24:00、土日15:00~24:00
定休日/木曜
席数/17

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RIN

ライター: RIN

カフェライター・エディター。街の小さな一軒からトレンドカフェ、昔ながらの喫茶店まで、カフェという場を通じて幸せを提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。ライフワークは"スコーンの人"(IG:@rin_125)。