14坪月商640万円の『貝と魚と炉ばたのバンビ』。超悪立地を逆手にとった「サプライズ戦略」とは
店を見つけたことそのものを「サプライズ」にする仕掛け
「サプライズ百連打」ともいえるほど『炉ばたのバンビ』にはお客の意表を突く仕掛けがさまざまに用意されているが、その一つがフロアの空間演出だ。
エントランスの扉を開けて現れるのはフロアではなく、薄暗い通路。漢数字が記された扉を隔ててL字型カウンター8席とテーブル16席の客席が設置されている。
建物の1階には「3階まであと29段」というメッセージが添えられたインターフォンが設置されており、予約客はそれで3階に店があることを確認するとともに扉番号を告げられる。やや不安な思いを抱えながら入店し、告げられた番号の扉を開くと活気に満ちた客席に辿り着くが、このプロセスを経ることで、「店を見つけたことそのものがサプライズ」になる仕掛けになっているのだ。
入店時のサプライズはこれだけでは終わらない。
来店客の9割以上が予約客で占められているが、客席ごとに予約客の名前とメッセージを記した掛け軸を天井から吊り下げている。ただ、「お客様は卓上に目が向いているため、掛け軸にはほとんど気付かない」と宮下氏は言う。この「気付かないこと」がポイントだ。掛け軸には予約時の電話代として10円が入ったポチ袋を挟んでおり、そのことをスタッフが説明した時に掛け軸の存在を知る。その時に「こんなところにメッセージが!」と気付くことでサプライズ効果が増幅されるのだという。
煙の中から刺身が現れるスモークカルパッチョが名物メニュー
フードは神奈川の漁港や農家から直送する魚介、野菜を使った刺身や炉端焼きを柱として約60品をラインアップしているが、商品もサプライズが目白押しだ。
看板メニューとして投入したのが「藁薫るスモークカルパッチョ」(1,518円)。鮮魚3種、貝2種の刺身をフラワーアレンジメントのドーム型ケースで覆い、その中に藁焼きの煙を閉じ込めて瞬間スモークする商品。商品の提供時に客席でケースを外すと煙が立ち上がり、その中から刺身が現れる仕掛けになっている。
藁薫るスモークカルパッチョの組客当たりの注文率は80%。2023年3月にはこの瞬間スモークの提供スタイルを応用した「トロサバといぶりがっこの半熟玉子のせスモークポテトサラダ」(528円)を新メニューとして投入したが、こちらも1日平均出数が13品を超える売れ筋商品だ。
「三浦野菜のオーブン焼 特製焦がしチーズソースがけ」(1,078円)はお客の目の前でチーズをバーナーで炙り、それを焼き野菜にかける。「生ポテトフライ その場でガッチャンコー」(638円)は生のジャガイモ1個を注文ごとに裁断機でカットするなど、シズル感溢れる商品や創意工夫に富んだ商品がメニューにずらりと並んでいる。
