看板なし・空中階で予約満席。坪月商40万超え『高円寺おつゆ』に聞く“隠れ繁盛店”のつくり方
「看板のない店」「隠れ家レストラン」「知る人ぞ知る小料理屋」——。星の数ほどある飲食店だからこそ、そんなごく一部の人しか知り得ない希少性の高い店はより客の興味をそそる。しかし実際、人目に触れない場所での繁盛店づくりなど本当に可能なのだろうか。オープンから1年を経たずして早くも坪月商40万円を上げ、予約困難となっている人気の“隠れ家”おでん居酒屋『高円寺おつゆ』の店主・坂野善一氏に、そのリアルと成功の鍵を聞いた。
【注目記事】空中階でも坪月商46万円。北千住『ジャンソーアタル』が当たったワケ
看板のないおでん居酒屋『高円寺おつゆ』
2023年4月、高円寺駅すぐそばの線路脇の雑居ビル2階に“ひっそりと”一軒のおでん居酒屋がオープンした。中野の人気鉄板焼居酒屋『ニューヨック中野』を手がける、坂野氏の新店舗『高円寺おつゆ』だ。駅からはわずか徒歩2分、店が入るビルの前の路地には絶えず人が行き交い、周辺にも多くの飲食店が立ち並ぶ場所といえば聞こえはいいが、この店の存在に気が付く人がどれほどいるだろう。
というのも前述の通り、店があるのは路面ではなく2階。おまけにその存在を示すものは薄暗いビルのエントランスの梁に申し訳程度に掲げられた小さなロゴのみで、階段を上った先の扉にも店名や看板はなく、もはやその先が店なのかすら不安になるほどだ。ただし意を決して扉を開ければ、温もりある和の空間が広がり、スタッフたちの気持ちのいい笑顔と実に豊かな出汁の香りに包まれる。
「この物件を見た時に、自然と『隠れ家』『おでん』というインスピレーションが湧いて、即決しました」
自ら大のおでん好きを公言する坂野氏は、そう語る。『高円寺おつゆ』の名物は、かつお節、まぐろ節、羅臼昆布、煮干しから毎日引くオリジナルブレンド出汁で作る30〜40種類のおでん。近年流行りの創作おでんではなく、「ザ・おでん」ともいうべき定番ダネを中心に、季節食材やアレンジ具材を加え、とことん出汁にこだわったメニューを展開する。
開業からまもなく10か月。看板のない空中階の“隠れ家”店であるにも関わらず、今やオープン直後から予約で満席、坪月商40万円を超える繁盛ぶりだ。
