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急成長『有楽町かきだ』蛎田一博氏の「ビッグニッチ」戦略。支えた効率化と人間関係

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日本刀のような包丁を手に笑顔の蛎田氏

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1万円でおなかいっぱい鮨が食べられる店として人気の『有楽町かきだ』。その経営者である蛎田一博氏(34)は、今や時の人だ。転職エージェントの会社の社長を務めながら、趣味の釣りに関連した海鮮丼づくりから始まった店舗は、2024年現在、小田急ホテルセンチュリーサザンタワー19Fに140席を構える大型店となっている。さまざまなメディアに登場し、その勢いから業界の新たな顔、リーダーとしての役割が期待される蛎田氏に成功の秘訣、そして今後の展開について聞いた。

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経費を抑えて、ネタで勝負

蛎田氏は大学卒業後に会社勤めを経験し、その後、起業して転職エージェントの株式会社ユニポテンシャル(東京都渋谷区神宮前)の社長となった(他に電気通信工事業の会社も運営)。コロナ禍に時間に余裕があったことから趣味の釣りを活用して社員に海鮮丼を振る舞い、出張型のまかないサービスを始めた。

その過程で豊洲市場にも顔を出して仲卸業者との人間関係も構築できたこともあり、2022年7月に『有楽町かきだ』をオープン。趣味の延長のような形での開店、しかも「寿司職人としての修業時間はゼロ」を逆にアピールして知名度アップに繋げ、一気に人気店とした。今年1月には「何者かになるための継続力 修業ゼロで予約困難店を作った寿司屋大将の思考法」(KADOKAWA)を出版している。

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ここで注意したいのは、蛎田氏の成功は決して天から降ってきたような幸運によるものではなく、当然、ビジネスマンとしての計算があったことである。その成功の要因は大きく分けて4つだ。

①経費は極力削減。「寿司はネタ」勝負に徹した
たとえば回転寿司では基本的にシャリは機械で握り、そこにネタを乗せてレーンで配膳するため、握る技術はほとんど必要とされていない。それで一定の集客が可能であれば、必要以上に握る技術のための経費をかける必要はない。YouTubeなどで技術を学んだ蛎田氏が握る寿司でも十分に客を楽しませることが可能で、その分の時間と経費を仕入れに回すことができる。だが経費を抑えたのはそこだけではない。

「私がメディアに多く登場させていただいているため、広告費をかける必要がありません。それから通常の寿司店であれば人を集めるための費用が必要になりますが、ウチは転職エージェントの会社をやっている関係で経費をかけずに集められます。その分浮いたコストは、食材の仕入れ費に充てられる。そうした背景もあり、店の原価率は50%を超えていますが、これは通常では考えられない数字でしょう。それから、マグロを買う場合でも必ず一本買いです。必要な部位だけ買うと高くかかりますが、一本買いだと値段を抑えられます」(以下、コメントは全て蛎田氏)

一般に飲食店の原価率は30%が目安と言われており、50%超は考えられない数値であるが、工夫次第ではそれさえ実現できると自ら実証している。そうしてネタ勝負に徹した結果、新宿の高層ビルの19階に140席という大型店舗ながら、1人1万円(税抜)で、満腹になるまで寿司を堪能できるサービスの提供が可能になった。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/