飲食店の44%が外国人労働者の採用拡大を検討中。一方でコミュニケーションへの慢性的懸念も
人手不足が深刻化する昨今、外国人労働者の重要性は増してきている。帝国データバンクが3月に発表した「外国人労働者の雇用・採用に対する企業の動向調査」によると、2023年10月時点で外国人労働者の数は200万人を超え、企業の16.7%が外国人労働者の採用を今後拡大するという結果に。今回は、外国人労働者の雇用・採用動向について帝国データバンクの調査結果をもとに解説する。
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外国人労働者採用の拡大、業種別では「飲食店」が最多
帝国データバンクによると、外国人の雇用・採用について、現在、外国人労働者を「雇用している」と回答した企業は23.7%である一方、「雇用していない」と回答した企業は59.2%となった。
また、今後外国人を雇用・採用するかという問いについては、現在雇用していてさらに採用拡大する企業は4.5%だったが、現在雇用しておらず今後採用するという企業は12.2%となり、合計16.7%の企業が外国人労働者の採用を拡大するという結果となった。
外国人労働者の採用について業種別に見てみると、採用を拡大すると回答した業種で最も多かったのは「飲食店」の44%。続いて「旅館・ホテル」の35.8%、「人材派遣・紹介」の33.8%となっている。外国人労働者の採用を拡大する背景には、インバウンドの増加により外国人観光客とのコミュニケーションを円滑に行いたいという狙いもあるようだ。なお上位10業種のうち「飲食店」「旅館・ホテル」「農・林・水産」「メンテナンス・警備・検査」の4業種は、国内人材の確保が困難な分野において専門性・技能を持つ外国人を受け入れる「特定技能制度」の特定産業分野に定められている。
「スキルや語学などの教育」は大きな課題
外国人労働者を雇用するにあたり、どのような点を課題と感じているかという質問については、「スキルや語学などの教育」が55.1%、「コミュニケーション」が55.0%と特に多く、続いて「継続性・定着」が40.9%となった。
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具体的には、小規模事業者にとって語学などの教育は人的資源やノウハウがなく困難であることが、特に資格や免許が必要な建設業、運輸・倉庫業といった業種で挙げられている。また、飲食店をはじめとするサービス業でもコミュニケーションの課題が多く挙げられた。ほかにも、必要機関への経費負担などで人件費が非常に高くなることや、生活面や就労支援の負担、採用から来日までの期間が長いなどの課題があるようだ。
今回の結果から、飲食店をはじめとするサービス業では外国人労働者の採用を拡大するという傾向が見られたが、課題はまだまだ多いことがわかった。飲食業界は人手不足が深刻化しているが、飲食店のみでは解決できない課題も多く、法制度や業界全体での改善が求められている。
