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“鶏焼肉”が連日満席のブーム! 見冨右衛門氏に聞く焼鳥業界のトレンドと攻略法

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きさ輝地鶏のモモ肉や燻製をかけた胸肉、砂肝などが入った「囲箱」(3,300円)。お好みで沖縄雪塩や八丁味噌をブレンドした味噌ダレ、赤酢を使った酢醤油でいただく。

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注文はQR、仕込みや調理の手間を省き、その分をお客に還元

先述した焼鳥業界の課題に加え、人々のライフスタイルによる鶏食ニーズの高まりも『鶏焼き肉 囲』オープンを後押ししたと見冨右衛門氏は話す。

「ダイエットしている方や筋トレをしている方からの鶏肉の需要は高いですし、ヘルシー思考な女性にもニーズがある。また年齢を重ねると牛肉の脂が重くて食べられないという声もすごくあって、そういう方々にも鶏肉ならおいしく食べていただけると思っていたんです。しかも食べたいものも多様化しているので、アラカルトで注文できるスタイルが良いと考えました」

「梅しそ胸肉」(1,400円)はネギ塩牛タンのように、クルッと巻いて焼くなど、鶏肉の新しい楽しみ方も提案

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『鶏焼き肉 囲』では、鹿児島・霧島の肥沃な大地で育てたオリジナルの地鶏「きさ輝地鶏」を使用。牛焼肉のようにご飯が進むよう、脂がたっぷりのっているけれど、その脂が上質な鶏を作りたいと考え、エサの種類や配合を変えるなど試行錯誤を今なお続けている。

この地鶏の育成についても「チャレンジしがいがある」と見冨右衛門氏。「地鶏はブロイラーに比べると飼育期間が長くコストがかかりますが、それでも飼育期間が75日以上をはじめとしたJAS規格の飼育条件をクリアすれば名乗ることができます。もし牛を生育するとなると、さらなる年数はかかる。そういう意味で地鶏は3か月サイクルで味を確かめて、ブラッシュアップできるのが良いと思っています」

とはいえ「きさ輝地鶏」は『鳥匠いし井ひな』でも一部使用されているほど、コストはかかっている。その分、串打ちをなくし、お客自身に肉を焼いてもらうことで、調理スタッフの負荷を下げた。

加えて、注文は全てQRをお客自身のスマホで読み込んでもらうモバイルオーダーを採用。その分サービス料は貰わずお客に還元しつつ、ホールスタッフの手間も省いて人件費削減に繋げている。その結果46席と大箱ながら、キッチンスタッフ3名、ホールスタッフ2名に加えアルバイト2〜3名で営業を回せているという。

栃木県産の極卵と地鶏を使った「地鶏の親子丼」(1,650円)は飲めるテクスチャーの玉子に、プリップリの食感の鶏が合わさり完成度が高い

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部位別に味わう鶏焼肉に「鶏油そば」「親子丼」など焼肉店にはないメニューを開発

料理は鶏肉を部位ごとに各自焼いて味わえる名物の「囲箱」に加え、「地鶏ワンタン」や「たこ焼き風メンチカツ」「鶏唐揚げ」などつまみも揃う。

とはいえ「あくまで鶏焼肉のお店なので、例えばポテトサラダには燻製した鶏のそぼろ肉を入れるなど、鶏が楽しめる料理であることは意識しています」と明かす。〆料理の親子丼も飲めるテクスチャーを意識して開発したり、油そばには自家製の鶏油を使ったりと、普通の焼肉店にはないメニュー開発に挑んでいる。

ドリンクの品揃えについて「焼鳥ってどのドリンクを合わせるかが、人によってものすごく分かれるジャンルなので、多岐に渡るメニューを用意しないといけない」と見冨右衛門氏は指摘する。そのためトライアンドエラーを繰り返し、ドリンクのラインナップを随時変更しているという。

オーダーが多かったというのが、ハイボールとレモンサワー。そして大阪で流行中だというガリが入った「ガリ酎ハイ」はスタッフの意見を取り入れた結果、人気を博したという。一方、焼肉店で定番の韓国のお酒はあまりオーダーが入らなかったそうだ。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。