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求人募集に90名もの応募! 『北千住fuji』が若者に支持される理由とは【連載:居酒屋の輪】

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『北千住fuji』&『中野トング』の共同代表、竹嶋太郎さん(左)と髙橋卓也さん(右)

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繁盛している居酒屋はどこかで必ずつながっている。名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の新しい名店を紹介してもらう連載企画。前回登場『中ノ食堂』の佐藤大介さんが「今、勢いのある後輩」として真っ先に名前を上げたのが、竹嶋太郎さんと髙橋卓也さんだ。丁度、新店をオープンしたばかりという二人に会うため、今回は北千住駅に向かった。

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元々、知る人ぞ知るプラモデル屋『FUJIモデル』の店舗兼住居だったという物件

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カッコよく働ける環境にスタッフ応募が殺到

東京メトロ・北千住駅の1番出口から線路を渡ってすぐの交差点。2024年3月15日、この一角にオープンした居酒屋『北千住fuji』は、大踏切通りを行き交う人々の注目の的である。長らく地域に根づいていたプラモデル屋の面影を残しつつ、レトロモダンに改装されたファサード。わずかに波打つガラス戸の向こう側では、エネルギッシュなスタッフたちが颯爽と客をもてなしている。

制服はロゴを入れた古着Tシャツ。お気に入りの柄を各スタッフが自由に選べる仕組み

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人手不足が大きな問題となっている飲食業界だが、若い働き手たちが求めるのは賃金の高さばかりではない。例えば「カッコよく働ける職場」であることも、若者に“働きたい”と思わせる重要な要素なのだ。実際に「一軒家をリノベーションしたおしゃれな居酒屋」と銘打った『北千住fuji』のオープニングスタッフ募集には、8人の採用枠に90人以上が応募した。

1階はオープンキッチンが中心。テーブル席が不規則に配置されている

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そんなカッコいい店舗を手掛けたのは、楽コーポレーションやベイシックスをはじめ、数々の繁盛店をデザインしてきたスタジオムーン。お店の代表である髙橋卓也さんからの“セオリーを無視した大胆な要望”を巧みに形にしたという。

「一般的にオープンキッチンにはカウンター席を設置しますが、僕はテーブル席の方が面白いと思ったんです。たとえば4人組のお客さまは、カウンター席横並びでご案内できないじゃないですか。テーブル席であれば、お一人様でも6名様でもキッチンの隣で接客できます。それに働く側も、訪れる側も、ちょっと普通じゃない方がワクワクするものです」(髙橋さん)

キッチン上部の天井を抜いた開放的な空間。アンティークの照明や家具が居心地の良さを演出する

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2階のテーブル席は吹き抜け部を挟み、二つのスペースで構成。建物左右の端それぞれに階段が設けられ、木造の古い橋のような細い通路(キャットウォーク)を通り、大きく回遊できる動線となっている。すぐ下にキッチンがあるため、少し大きな声を出せばオーダーが通るのも便利だ。

「デザイナーさんは『本当に通路がこんな狭くていいんですか?』と心配していました(笑)。でも、吊り橋効果みたいにドキドキするような要素を入れ込みたかったんです。先日も子ども達が大はしゃぎで探検していましたよ」(髙橋さん)

大胆なのは店舗デザインだけではない。この店舗を契約したのは、初の独立店『中野トング』を立ち上げてから、わずか半年後。そこから半年以上もかけて新店づくりに力を注いできたという。

「きっかけは『中野トング』でお世話になった不動産屋さんからの紹介でした。『賃料25万円で1階13坪、2階はちょっとしたスタッフルーム』という説明でしたが、実際に内覧したら2階も13坪、合計26坪ありまして(笑)、ワクワクしちゃったんですよね。どうにか資金を用意できないものかと、融資を得意にしているコンサル3社くらいに相談したところ『これ以上は借りられませんよ』と断言されました(笑)。それでも引き渡しの2日前に、なんとかギリギリで融資がおりたんです」(髙橋さん)

駅近26坪で確かに破格の家賃ではあるが、店舗兼住居そのままの引き渡しであり、改装には多額の費用がかかった。契約からオープンまで約7か月分の賃料も発生している。創業間もなくの挑戦としては、かなり大きな賭けだ。

「僕一人での経営だったら、ここまでの勝負はできないですよ。二人だからこそ、かなりムチャな冒険ができました」(髙橋さん)

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。