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求人募集に90名もの応募! 『北千住fuji』が若者に支持される理由とは【連載:居酒屋の輪】

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お通しの「だし豆腐」(350円)。手作り豆腐ならではの細かな穴に出汁が浸透する

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1年かけて開発したメニューとSNS戦略とは?

名刺代わりの一品「だし豆腐」には、創業90年という近所の老舗店から仕入れる手作りもめん豆腐を使用。北海道十勝産トヨマサリ、佐賀県産フクユタカという2種の大豆からなる濃厚な味わいに、毎日丹念に仕込む一番出汁の旨みが染み渡る。そのほか「自家製みそと千寿黒ねぎ」(780円)など、北千住の特産品を活かした料理も印象的ではあるが、なんといっても一番の看板メニューは前菜の盛り合わせだ。

中央奥から時計回りにネギ豆腐、酔っ払い甘エビ、磯部ブラッターチーズ、パクチー、冷製青椒肉絲、クラゲの中華レモン、中央がよだれ鶏

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「中華風の前菜盛り合わせって珍しくないですか?」という髙橋さんの一言から着想を得て、竹嶋さんが作り上げた「千住fuji盛り」(1,980円)。幅広い世代に愛されそうな優しい味付けながら、随所に中華風スパイスが香る。しゃっきり食感の細切りピーマン、ユッケ、うずらの黄身を混ぜ合わせる冷製青椒肉絲といった、独創的かつ酒が進む料理のオンパレードだ。ブラータチーズの中に、みたらし風のソースを仕込むなど、味だけでなくSNS映えを意識した盛り付けも見事である。

フードメニューの原価率は基本的に32%で固定しているが、こちらの盛り合わせだけは原価を気にせず、贅沢に食材を使用しているそうだ。

「黒胡麻プリン」(900円)。自家製ミルクプリンに甘じょっぱいソースが調和する

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「黒い料理って面白くないですか?」という髙橋さんのアイデアから、ほとんどのフードメニューは黒い見た目が特徴。もちろん着色料などではない。炭焼き、イカ墨、岩のり、みたらし、黒胡麻など、素材の色を活かしつつ、味わいのバランスも見事に整えられている。

「Instagramの写真一覧で黒い料理ばかりが並んでいて、唯一カラフルな『千住fuji盛り』が際立っていたら、なんだかワクワクしませんか? そんな感じで僕が話したデタラメなアイデアを、タローさん(竹嶋さん)が形にしてくれるんですよ。彼は天才なので。だから思いついたら口に出したくなっちゃって。でも3分の 1ぐらいは無視されますね」と髙橋さんは笑う。

見栄えが良く、独自性があり、味わいにも妥協のない料理の数々。これら全て「誰が作っても絶対に同じ味なるレシピ」が確立されているというのも驚きだ。

「アルバイトの子が仕込んで盛り付けた料理を出しても、客席は“わっ”と盛り上がります。作った本人も嬉しいですよね」と竹嶋さん。自信満々に料理を提供できるオペレーションは「カッコよく働ける職場」にも結びついている訳だ。

生の果実を使用したフルーツサワーなどドリンク(全38品)も厳選されたものばかり

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ワクワクするような挑戦はこれからも続く

『北千住fuji』のロゴを手掛けたのはApple、ZARA、Starbucksなど大手での実績も多いロサンジェルス在住の人気アーティストSebastian Ariel Curi氏。Instagram経由で仕事の相談をしたところ、快く引き受けてくれたという。空間や料理だけでなく、こうした細部までクオリティが高いことが、若者に限らず多く人を惹きつける吸引力になっている。

ロゴデザインは富士山のシルエットがモチーフ

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「収入だけを考えれば、間違いなく一人で独立する方が良いです。でも、自分だけの力では絶対にできないチャレンジがあります。自分だけのアイデアで、一人の判断で新しい挑戦を始めるのって、非常に怖いことですよ」(竹嶋さん)

「二人とも10年以上は居酒屋業界での経験がありますから“道をはずれすぎた挑戦“は必ずどちらかがストップをかけます。色々と前例のないことをしていますが、いつもお客さまの反応は上々です。二人の意見が噛み合ったときの判断は間違いない。この二人だからこそ新しい冒険ができます」(髙橋さん)

単なるお金儲けでは、他人の心を動かすことは難しい。ともに行動することでワクワクを享受したいからこそ、二人の元には協力者も集まって来る。

そんな二人が共同経営をはじめた時から、温め続けているのが居酒屋以外での挑戦だ。「卵と小麦粉」を使用した業態だというが、果たして、今後はどのようなワクワクをもたらしてくれるのだろうか。

『北千住fuji』
住所/東京都足立区千住旭町7-28 石井店舗B
電話/03-6812-0277
営業時間/16:00〜23:00
定休日/月曜(祝日の場合は翌火曜)
席数/40
https://www.instagram.com/kitasenju_fuji

『中野トング』
住所/東京都中野区新井1-3-3 カーサ巴1F
電話/03-5318-9292
営業時間/16:00〜23:00
定休日/不定休
席数/40
https://www.instagram.com/nakano_tong/

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。