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高円寺のベトナム料理『チョップスティックス』、国産米の生麺フォーに賭けた男の意地

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『チョップスティックス』など6店舗を経営するフクモチック有限会社の茂木貴彦社長

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ベトナム屋台料理を扱う『チョップスティックス高円寺本店』が今年で21年目を迎えた。運営するフクモチック有限会社は、多くの顧客に支えられ同名店舗3店、炭火焼き鳥の『ビンミン』などを加え、日本ではそれほどなじみのないベトナム料理で合計6店舗という繁盛ぶりである。

こうした好調なビジネスの原動力は日本初の生麺フォー(平面に近い形の米でできた麺)、日本人向けに改良されたバインミー(ベトナム風サンドイッチ)など、旺盛な商品開発にある。同社の茂木貴彦社長に、ビジネスの秘訣を聞いた。

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高円寺駅構内にある『チョップスティックス』の看板

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メインターゲットは日本人

JR高円寺駅の改札付近の柱に大きく『チョップスティックス』の看板が掲げられている。「高円寺発祥 日本初生麺フォー」の文字が、ベトナム国旗のベースとなる赤地の上に踊る。高円寺駅から徒歩2分程度、大一市場の中に『チョップスティックス高円寺本店』がある。多くの飲食店が同居する雑多な雰囲気が、ベトナム屋台料理という庶民的なイメージと重なる。

同店舗がベトナム料理という決して日本では大きくないマーケットを対象にしながら20年以上の歴史を刻んでこられたのは、メインターゲットを日本人に置いたことにあると思われる。

近年、在留外国人の数が増え、2023年6月末の時点で全国で322万人余、これを国別に見ると約79万人の中国に次いで多いのが52万人のベトナムである(出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」)。多いとはいえ、52万人。ベトナム人客をメインに見込んでビジネスを展開するのはリスクが大きすぎる。

茂木社長は「ベトナム人のお客様は1割もいないと思います。ベトナム人留学生はあまり外食をせず自炊する方が多いようです。また、外食するにしてもベトナム料理店はあまり行かないと思います。行くとしてもベトナム人経営の店に行くでしょう」と説明する。

茂木社長の目には当初から日本人をターゲットにすることが頭にあった。そして、ベトナム料理をそのまま持ってくるのではなく、人と違ったことをして新しい市場をつくることを意識してきたという。まず、考えたのはフォー。日本では生麺フォーを手に入れることが出来ないため乾麺フォーを提供するベトナム料理店ばかりであった。しかし、ベトナムでは乾麺フォーを食べる人はほとんどおらず、生麺フォーがデフォルトである。ただし、日本米より味が落ちるベトナム米で作られたフォーである。

『チョップスティックス高円寺本店』は隠れた名店が立ち並ぶ「大一市場」内にある

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/