坪月商40万円を売る幡ヶ谷『キッチン かねじょう』。食通も惚れる“ひとひねりのフレンチ”
故郷・鹿児島食材と“ひとひねり”のアレンジで差別化を図る
そんな『かねじょう』が、一度来店したお客を確かにつなぎ止め、他店との差別化のために一貫して提供してきたバリューの一つが、“ひとひとねり”アクセントを加えたフレンチ惣菜の数々だ。スパイスやハーブ、辛味、酸味など、多国籍のエッセンスを取り入れた料理は、随所に思わぬ発見や刺激があると同時に、実に酒が進む。
だが、構成はいたってシンプルだという。まずは何より、素材第一。発泡スチロール1箱分が毎週「お任せ」で届く一本釣りの鮮魚をはじめ、『ふくどめ小牧場』の幸福豚、鹿や鴨といった季節のジビエなどはすべて、晃大氏の故郷・鹿児島県産。そこに、近所の青果店で毎朝仕入れる新鮮な旬の野菜を1、2種だけ組み合わせて仕上げるのが、『かねじょう』流だ。
いい食材だからこそ、少ない品目で満足感ある一皿にできると晃大氏は話すが、これがふらりと寄った粋な立ち飲み店で味わえるとなれば、思わず足を止めてしまうお客たちに共感せざるを得ない。
メニューはその日に決める。食材のローテーションで、ライブ感とロス削減を両立
さらに、こうした料理のほとんどは当日に考えるというライブ感もまた、地元客から食のプロまで豊かな顔ぶれがこの店に集まる理由の一つだろう。その日に食べ頃を迎えた魚、肉、野菜と、気候などを考慮し、素材・技法・調味を組み替えるイメージで日ごとに仕立てられる一品は、町の食堂の日替わり惣菜のようなワクワク感を備えた「今日、食べるべき一品」となるのだ。
「厨房のスペースや営業中の調理工程を考えると、できることは限られます。だからこそ使用する食材を絞り、それをどんどんローテーションさせることでロスの削減にもつながっています」と晃大氏。
当日に食材をそろえメニューを決めるというのは、一見すると負担が大きい手法にも思えるが、決め込んだメニューに必要な食材が手に入らないというリスクがないため気楽だというのが晃大氏のロジック。その代わり、自家製の調味料やソースなど味付けのバリエーションは多めに備えることで、味に幅が出るよう工夫していると教えてくれた。
