池尻の人気店が渋谷に進出! 『YAOYA TOKYO』狙うはアッパー層と若者たちの“交点”
「旨い焼き鳥」という確かな軸があるからこそ、“遊び”が成り立つ
『YAOYA TOKYO』では、これまで培ってきた焼き鳥からの新たな展開として、「炭焼き料理」を主役に据えたのが大きな特徴だ。渋谷という多様な世代・カルチャーを持つ客層を意識し、「焼き鳥」の枠を飛び出した、より創作性・創造性の高い料理で勝負をかける。
前回の取材でも「料理やデザイン、音楽、サービスまで、自分なりの“好き”や“かっこいい”、“遊び”の要素を自然体で表現してきた」と語った遊津氏だが、やはりその信念がブレることはない。
シグネチャーには、大阪の特産品である高級合鴨・河内鴨を使ったタルタル風の一品や、こぶし型のラム肉のハンバーグ、西京焼きをトリュフ風味に仕立てた「最強焼き」など、ひとひねり加えた炭焼き料理をラインナップ。その出発点のベースにはすべて、「こういう料理があったら、楽しくお酒が進むよね」というシンプルな視点があり、焼き鳥や和食の延長としてのメニューづくりに囚われることはないという。エスニック、フレンチ、イタリアン、中華までジャンルレスに、また既存店の人気メニューをまったく別の料理にアレンジするなど、“遊び”の取り入れ方もさまざまだ。
「でもそれって、バックグラウンドに確かな軸としての『王道の旨い焼き鳥』があるからこそできることなんですよね」
ふいに、さらりとそういいのけた遊津氏の言葉に、核心が現れた気がした。本店『焼鳥 やおや』から始まったこだわりの炭火焼き鳥がすべての核にあり、そこに確かな価値が認められ続けてきたからこそ、他の部分で遊んだり自由にチャレンジしたりできるというのだ。
「生粋の料理人のスタッフがほとんどいない僕らがここまで認められているのは、当初からスタッフみんなでつなぎ、レベルアップを続けてきた炭火焼き鳥があってこそ。それを疎かにしてしまったら、“遊び”もヤオヤブランドも崩れてしまうと思うんです」
空間づくりにも同じことが言えると遊津氏は語る。「もしこれで、ただ流行りと利益だけを追いかけたものを提供していたら、チャラいだけの店になりかねませんから(笑)」。トラディショナルな一面を持つ焼き鳥・炭焼きという軸のおかげで、自由な表現の“かっこいい”が成り立つ —— 。ヤオヤがヤオヤたる本質はまさに、ここにあるのだろう。
