『世田谷バル』から16年。新店『道玄坂バンバン』も絶好調の高城直弥氏に学ぶ成長戦略
「QRコードでの注文」は、慎重な導入が成功のカギに
『道玄坂バンバン』では、既存店にはない新しい取り組みにも挑戦しているが、そのひとつがQRコードによるセルフオーダーシステムだ。「ずっと抵抗があって入れていなかった」という高城氏だが、POSレジの入れ替えに際して導入してみたところ、想像以上の効果を出しているという。とりわけノンアルコールの注文が増えており、「お酒を飲まない人ほど追加注文を遠慮していたのでは」という新たな気付きにも繋がったという。
ホールスタッフの負担や人件費が削減でき、人為的ミスもなくなる……といいこと尽くしに見えるセルフオーダーシステムだが、利用する上では注意が必要だと高城氏は指摘する。
「よく言われるのが、接客面でのデメリット。お客さまとのタッチポイントが減るし、オーダーの声掛けによるお店の活気などが損なわれてしまうので、他の部分でのカバーが必須です。当店では、バッシングに細かく気を配る、厨房での声掛けを意識するなど、細かい部分のケアに注力しています」と高城氏。実際、最初のオーダーの前にスタッフが必ずメニューの説明に行ってコミュニケーションをとり、説明の最後に「QRコードもございます」と案内するのだそう。
「QRコードが客席にドカンと貼られていて『注文はこちらでお願いします』というお店も多いけど、うちは『どちらでもいいので、よろしければお使いください』っていうスタンス。そうするとだいたいみんなQRコードを使ってくれるんですけど、スタッフに直接注文する方法も残しておいて、お客さんが使いやすい方を選べる、という部分を大事にしています。それに、飲食店は『メニュー表のシズル感』も注文を得るための大事な要素なので、紙のメニュー表を残しておくことも重要だと考えています」(高城氏)
既存店は平日2回転、週末3回転の一斉スタートで、売上が2倍に
具体的な数字は控えるが、同社では既存店の『リゾットカレースタンダード』や『かしわビストロバンバン』も、現状過去最高の売上を叩き出している。その大きな要因が、昨年より予約を「完全2部制、一斉スタート」に変更したことだ。高城氏自身、ホテルでコースや宴会のドンデン(片付け~セッティング)を経験していたこともあり、完全入れ替え制にしたほうが効率化を図れるのではとの見立てがあった。そこで、平日は18時と20時スタートの2部制、週末は17時・19時・21時スタートの3部制に。料理とデザートのラストオーダーは各退店50分前、ドリンクは30分前で、退店15分前にはお会計を一斉に出し、同時進行でドンデンを進めるという流れだ。
「料理のオペレーションは、世田谷バル時代から培ったノウハウがあるので、ある程度スタンバイしておいて素早く提供できるのはうちの強み。一気に40人満席でも料理をポンポン出せるので、1時間10分のオーダーにも対応できるんです。それにお客さまは、お店に入って料理が出てくるまで待つのはすごくフラストレーションだけど、遊園地やラーメン店のように並んで待つのはそこまで苦ではなく、むしろ期待値が上がると思っています」(高城氏)
完全2部制にしたことで、最低限のスタッフ数で営業できることに加え、毎日同じ時間に同じ作業をすることでアルバイトの業務の習得率が格段に上がり、決まった時間に終業できるというメリットもある。
「2部制にはもちろん賛否があり、もう少しゆっくりしたいという声もありますが、それを上回る満足感を提供して、売上をしっかり社員に還元できる方が会社の成長にとって重要だと考えています」(高城氏)
