『世田谷バル』から16年。新店『道玄坂バンバン』も絶好調の高城直弥氏に学ぶ成長戦略
社員の平均年収500万以上! インセンティブと手当の充実で従業員のモチベーション向上
前述のように徹底して業務の効率化を図ってきた同社だが、その裏側には支えとなるスタッフの存在が欠かせない。「うちは少数精鋭の会社なので、既存のスタッフとなじむかどうかも含め人材はしっかり選ばせてもらっています。ただその分、給与面をはじめ待遇はきちんと整えたつもりです」と高城氏。実際に『道玄坂バンバン』では、店舗は6月に完成していたものの、人材を厳選し3か月ほど開業を遅らせた。その間、求人サイトのアルバイト募集には300人もの応募がきたというから驚きだ。
同社の社員の採用条件は、固定給30万円スタートで、賞与は年3回。毎月8~9日の休日に加え、計画年休と夏休みで最低限の有休も保障している。ちなみに2023年度の社員の平均年収は500万円以上、賞与額は150万円以上を実現している。加えて社員には、各店舗の売上に対するインセンティブも用意。毎月の売上目標に対して、1%を超えるごとにその店舗に所属している社員にプラス5,000円。さらに営業日数プラス2日分の売上予算を達成した場合は、1%につき1万円と金額が倍になる。またアルバイトへの手当としては、土日祝の出勤手当(1日1,000~2,000円)に加え、お盆やゴールデンウィーク、クリスマスなどの繁忙期手当(1日2,000円~5,000円)なども用意する。
「売上に対してのインセンティブは結構難しい部分もあって、例えばお客さんから売上を取ろうと思って過剰接客してしまい、結果売上が落ちてしまうといったケースもあります。その点、弊社はインセンティブよりも賞与の比率を大きくし、本人の頑張りを評価してあげることでそうしたリスクを軽減しています」(高城氏)
また同社では、全店でホールと調理を分けておらず、全員が掃除も発注も、料理の仕込みもドリンクも行う。「料理をいちからつくりたい料理人や、サービスのスペシャリストはうちには不向きだと思う」と高城氏は言い、お互いのマッチングを図るため必ず3か月間の試用期間を設けているそう。
「いいスタッフが入ってくれて、いいお店ができて、売上が立って、また出店していけるっていう、いい循環ができているのが現在の状態。『求人飲食店ドットコム』をはじめ、他の求人媒体にも年間でかなりのコストをかけていますが、見合った応募が来るので必要経費として計上しています」(高城氏)
最後に、高城氏にこれまでの店づくりを振り返ってもらうと、「16年間やってきたけど、その時々で自分があったらいいな、というお店をつくるというのは変わらない」という答えが返ってきた。
「ワンコインで飲みに行けて、立ち飲みで気軽に利用できる店があったらいいなと考えてつくったのが最初の『世田谷バル』。『リゾットカレースタンダード』は、『世田谷バル』の価格帯で、椅子があったらいいなと思ってつくりました。その後30歳半ばになって、自分が好きなハイボールと、地元滋賀の鶏料理が楽しめる店をつくったのが『かしわビストロバンバン』です。どの店も頑張ってくれていますが、ずっとこの状態が続くとは思わないのでどんどん新しいことをやっていかないといけないですし、今後もスタッフと楽しみながら成長できる事業計画を進めていきたいです」と高城氏。
飲食業界に夢を与える注目の存在として、今後の動向からも目が離せない。
『道玄坂バンバン』
住所/東京都渋谷区道玄坂2-20-9 リアライズ道玄坂ビル2F
電話番号/03-6455-3312
営業時間/月~木18:00~23:00、金18:00~23:30、土17:00~23:30、日17:00~23:00(各L.O.)
定休日/無休
席数/38
