坪月商50万円、目黒『炉端と酒 きいと』は“当たり前”の追求で売上倍増【連載:居酒屋の輪】
繁盛している居酒屋はどこかで必ずつながっている。名店誕生までのストーリーを探りつつ、また別の新しい名店を紹介してもらう連載企画。今回うかがったのは『空腹鶏』の中村純平さんがプライベートで通っている居酒屋だ。「一つひとつの料理が非常に丁寧です。 口コミだけで毎日満席なのも納得!」と同業者も惚れ込む仕事ぶりを覗いた。
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取材当日も予約で満席だった『炉端と酒 きいと』。お客の上着をうやうやしく預かるスタッフ、息ぴったりの穏やかな声色で唱和するオーダー、落ち着いた印象ながら居酒屋らしい華やかさもある。客単価は8,500円と、一般庶民が普段づかいするには少々高めの設定ではあるが、それでも口コミによる集客だけで連日満席なのだから、それだけの価値を提供している証左だろう。
画像を見る「繁盛の理由ですか? 特別なテクニックは何もありません(笑)。当たり前のことを当たり前にやっているだけ、目の前のお客さまを幸せにすることしか考えてないですよ」と話す坂上さん。お客が喜ぶことを追求し続けた結果、経営的な成功は後からついてきたという。しかしながら、一品目を注文しただけでも坂上さん言う“当たり前”がいかにハイレベルなものかが伝わってきた。
画像を見る坂上さんの刺身を切る洗練された所作は腕利きの職人そのもの。仕入れは豊洲だけでなく、北海道の函館や九州の唐津などの市場も利用しており、そこらの競合店とは一味違った粒ぞろい。遠方からの取り寄せはスポット便による一括配送でコストを抑えるほか、マイナス60度の超低温冷蔵庫などを駆使することで、効率的に品質の高い魚介を提供する。
画像を見る「食材に合わせて流水解凍や低温解凍を使い分けるなど、解凍方法はチルドと遜色ないものを出せるよう研究を重ねました。もちろん鮮度が勝負のネタもありますが、マグロや白身魚は熟成方法も試行錯誤しています。ドライが良いのか、真空が良いのか……寿司店などからも学びつつ、さまざまな手法を試し続けてきました」
画像を見る取材当日の盛り合わせは「岩手 カツオ」「羅臼 ブリ」「青森 平目 昆布〆」「大間 マグロ」「北海道 ツブ貝」「長崎 大紋ハタ」というラインアップ。追い鰹の出汁とみりんで味を整えた醤油、香り高い静岡県産わさび、そして坂上さんの小粋なメニュー解説により、そのおいしさは増幅される。
画像を見る「何を食べてもおいしいのは当たり前、何を飲んでもおいしいのは当たり前、良いサービスができるのも当たり前」といった“当たり前”が坂上さんの口癖だ。例えば接客を見ても、一度来店したお客の苦手なものやアレルギーを覚えたり、何気ない一言から気持ちを汲み取ったり、力を入れずとも自然と体が反応できる“当たり前”を増やすことで、レベルアップを続けてきたのである。
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