渋谷で坪月商30万円超を連発する『やむなし』。集客の秘訣は“何となくいい店”の追及
事業目標は東京・渋谷のみで100業態100店を集中展開すること。すでに同エリアで居酒屋30店を運営しているのが株式会社渋谷の歩き方だ。
今回、スポットを当てるのは、同社が唯一複数店を展開している居酒屋『やむなし』である。道玄坂、桜丘、松濤に3店を構えているが、いずれも坪当たり月商が30万円を超える繁盛店揃い。3店の統括マネジャーである出野巧氏に『やむなし』の強さの秘訣について伺った。
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「何となくいい」が『やむなし』の集客ポイント
居酒屋『やむなし』の1号店である『anywayやむなし』が京王井の頭線渋谷駅西口近くの路地にオープンしたのは2018年1月。桜丘町エリアの再開発前だった2021年1月にさくら坂沿いのビル地階に2号店、松濤エリアのランドマークだった複合文化施設「Bunkamura」の閉館が発表された2022年11月に3号店をオープンし、東京・渋谷に3店をドミナント展開している。
『anywayやむなし』はオープンからすでに7年近く経っているが、24.5坪50席の規模で月商は1,320万円。桜丘店、松濤店も坪月商が30万円を超え、いずれ劣らぬ繁盛ぶりを見せている。
『anywayやむなし』店長であり、『やむなし』3店の統括マネジャーである出野巧氏は「『何となくいい』が『やむなし』の集客ポイントです」と説明する。
「『やむなし』3店には明確な売りがありません。フードは和食をベースにしながらさまざまなジャンルの料理をミックスしており、名物メニューの『トロトロ牛もつ煮込み』(705円)など3店の共通メニューも3割ほどにとどまります。同じ渋谷でもエリアによってニーズは少しずつ異なり、それにアジャストしているため。店長がお客さまの『何となくいい』を探り出し、それを商品やサービスに反映する方針を採っているんです」
「ヨーロッパのアパルトメント」をイメージした独創的な内外装
「何となくいい」がどう具現化されているのか。『anywayやむなし』でその手法を探っていこう。
雑居ビルに入居する『anywayやむなし』は雑居ビル1階、地下1階の2フロア構成だが、店づくりの前提条件として挙げられるのがその立地特性だ。同店が店を構える40メートルほどの路地には株式会社渋谷の歩き方の系列店5店を集中出店。『anywayやむなし』は同社の創業店である居酒屋『くんなまし』と『大衆酒場ひまわり』に続く3店目になるため、当然のようにこのエリアのニーズを熟知していた。
内外装のデザインテーマは「昭和50年の頃に日本人が憧れたヨーロッパのアパルトメント」。1階フロアは木目を基調としたカウンター席とテーブル席を配置しており、エントランスをくぐると目の前には大きな白い提灯。その下の黒く塗装されたらせん階段で地階に降りると、ビロードのソファ席と座敷席が混在した和洋折衷の不思議な空間が広がる。
「『くんなまし』は30~50代がメイン客層の大人の居酒屋、『大衆酒場ひまわり』は20代のお客さまも多い大衆酒場。『anywayやむなし』はその中間層をターゲットにして開発しました。税抜客単価は『くんなまし』が4,500円、『ひまわり』が3,100円なのに対し、『anywayやむなし』は3,700円。客単価3,000円台は個人店やチェーン店など競合店の多い価格帯ですから、ユニークな内外装コンセプトで差別化を図るとともに多様なタイプの客席を用意して間口を広げました」
